カメレオン及び爬虫類の脱走・その対策
近年騒がれているペットとして飼われている爬虫類の脱走事例。
「マンションの窓から大蛇が!」「オオトカゲが逃げ出している!」等、例を挙げればキリがありません。
今のところ、日本でカメレオンによる屋外への脱走は聞いた事がありませんが、
今後全く起きないとは言い切れませんので
今回は「ペットの爬虫類の脱走」についてご紹介させていただきます。
爬虫類は脱走のエキスパート!
蛇やヤモリ等の爬虫類をショップで迎え入れる際に店員さんに言われる言葉、あるいは飼育書籍等で書かれている言葉として、爬虫類達はとにかく「脱走が上手い」「脱走名人」と言われています。
カメレオンと同じ爬虫類のヘビはケージの施錠がされていなかったりすると扉を自分で開けて出ていきますし、オオトカゲは持ち前のパワーとスピードで窓や扉が開いていれば簡単に脱走します。ヤモリも立体的な動きをしながら小さな隙間から逃げます。
カメレオンは基本的に動きがゆっくりなため脱走下手に思えますが、体色を変える、目立った動きがないと言った高いステルス能力を見せるため、日光浴のためにベランダ等に個体をそのままにしておくと簡単に姿を眩ましてしまいます。
「脱走が上手い」という生態は、
爬虫類を飼育する上で必ず頭に入れておかなければならないことなのです。
・脱走を必ず防止しなければならない理由は?
最近は人気も出てきて飼育する方も増えてきている爬虫類ですが、犬や猫のように「受け入れられやすい動物」ではないことを忘れないようにしましょう。
犬や猫は飼育している方も多く、その生態について等も一般的に浸透しています。しかし、爬虫類の生態についてはそこまで浸透してはおらず、むしろ恐怖や迷信の方が浸透しているように思えます。
そんな周りの方々の目の前にオオトカゲや大型のニシキヘビが現れたらどうなるかなんて火を見るより明らかです。警察も出動するでしょうし、場合によっては逃げ出した爬虫類が相手にケガをさせてしまう事もあります。また、逃げ出した爬虫類が近縁種と交配したり、在来種を食べてしまう事も懸念されています。
しかし、脱走した爬虫類が悪い訳ではありませんし、巻き込まれた周りの方々も色々意見はあるでしょうが間違ったことは言っていません。悪いのは100%飼い主なのです。
脱走を防止するために!
爬虫類達が如何に脱走が得意か、脱走を防がなければならないかが分かったところで「脱走対策」についてご紹介させていただきます。
1,ケージが閉まっていることを確認しよう
飼育ケージによってはカギが付いている物もあり、クローゼットのように開くタイプは無施錠だと簡単に開けられてしまうので施錠は不可欠です。また、スライド式のケージは爪や鼻先を隙間にねじ込んで開けることがあるのでコチラも施錠は必須です。
カメレオンの場合は鼻先でグリグリする事があるためケージの施錠は大切ですが、鳥カゴのように「金属製の扉を持ち上げる」「しっかり噛み合った施錠部分を外す」等という条件をクリアしなければ開けられないタイプの物であれば脱走を防ぐことができます。
☆我が家の場合 ペペ君のケージ
ペペ君のケージは若干年期の入った鳥カゴで、扉は「持ち上げる」タイプです。ペペ君では鼻先グリグリしようが持ち上げられない重さなので、「どうやっても開けられない」と認識させることで脱走を防いでいます。
もし、同じようにカメレオンを鳥カゴ飼育しているけど不安な場合は「ナスカン」の併用をオススメします。ホームセンターや100均でも手に入り、扉にかけるだけでOKです。
2,ケージに壊れている部分がないか確認しよう
メッシュが若干破れていたり、ケージに隙間が開いている場合は新しい物に取り替えるか修理します。
3,部屋の施錠もしっかりしよう
こんなこと言ったら元も子もない感じですが、
「屋外に絶対出さないようにする」のが肝心だと思います。
室内での脱走であれば、部屋の中にいる脱走個体をゆっくりじっくり探して捕獲すれば良いだけの話で終わります。
■こんな事ってないですか? 「換気で窓開けてました!」
爬虫類脱走でよく聞くのが「窓開けてました」というお話。
最近は節約の観点だけでなく某ウイルス対策で窓を開けて換気することも増えてきました。
確かに飼育温度や湿度の調整のために換気というのも良いアイデアです。しかし、外界と繋がる門を開けたままのハンドリングは個人的には賛同できません。
彼らは出れそうな隙間があれば「出てしまいます」。
しかもステルス能力が動物界の中でも高いので脱走中の様子を見ない限りは気付かないです。
「個体がいなくなって初めて気付く」これが爬虫類の脱走です。
もし脱走されてしまったら…!
しかし何らかの理由で脱走されることもあるかも知れません。
急に飛び出してきた、噛まれてビックリしていたら脱走されたなんてこともあり得ます。
1,室内の場合
「メンテナンスしよう」と思ってケージを開けたら飛び出してきた!
という場合で窓も他の部屋に続くドアも閉めた状態です。
・ヘビ、オオトカゲの場合
大人しい個体の場合はそっと捕まえてケージに戻します。
餌を与えようとした時に脱走した場合は餌でケージの中に誘導する、あるいは食べさせて少し時間を置いてから優しく捕まえてケージに戻します。
興奮していたり元々気性が荒い面がある個体の場合はタオルや服を被せて混乱している内に捕まえてケージに戻します。
・小型のトカゲ、ヤモリの場合
カナヘビ系やフトアゴ、ヤモリの仲間は動きが早いので場合によってはオオトカゲやヘビより苦戦します。
フトアゴは餌で釣りやすいのでさほど苦労はしませんが、ヤモリやカナヘビ系は動きも早く、掴み方や場所が悪いと自切したり皮をズル剥けにして逃げ出します。
立体活動も得意な万能アスリート&忍者なため、ラックの上やドアの上の微妙な出っ張り、カーテンも駆け上がっていきます。
特に「脱走してから最強」なのはヤモリの仲間で、壁や天井すら本当の意味で縦横無尽に駆け回ります。
素手での捕獲が難しい場合は、
生体購入時に梱包で使われるプラスチックケースやプラスチックカップを被せて捕まえます。
☆あると超便利♪ 虫あみ
ホームセンターや100均でも売っている虫あみが脱走した生体を捕まえるのにかなり重宝します。特に網の枠部分が針金になっているものは角度を変えれば天井に張り付いたヤモリの捕獲にも使えますし、ちょっと良い値段の物は1mくらいかそれよりちょっと大きいくらいの生体を捕まえるのにも活躍します。
脱走と捕獲に慣れていない方は是非虫あみを常備しておくことをオススメいたします。
☆番外編!目立ちすぎる「最強の忍者」について
脱走されると厄介なヤモリの中でも「最強」と言っても過言ではない「キングオブアウトブレイカー」が「ヒルヤモリ」という種類です。
見た目は忍ぶ気があるのか聞きたいくらいのキレイな緑や派手な体色に黒目がちのクリクリした目が可愛いヤモリで、昼間に行動します。
しかし、目が良いだけでなく動きがとにかく早いです。
頭も良いので脱走時には飼い主の死角から素早い動きで脱走します。
そして高い所からあっけに取られる飼い主を見下すことも少なくないようです。
捕獲にはヤモリ以上にスピーディーかつアクロバティックな戦いを強いられます。プラスチックケース等を被せて捕獲しますが、慣れれば素手で優しく捕まえます。
余談ですが、私はかつてヘビや大型のトカゲも扱いましたし、ヒルヤモリも飼育していますので何となく分かりますが、ヒルヤモリは人にも良く慣れるので、ストレスをかけなければ脱走ではなくハンドリングもできます。
この種類に関しては逃げ場は塞ぎますが、
「逃げなくても良いんだ!」と認識してもらうことの方が重要な気がします。
・カメレオンの場合
なかなか見ないですが、ケージを開けっ放しにしていたり小型種だと鳥かごの隙間から抜けられることがあります。
動きはゆっくりなので発見は簡単です。
しかし、目を離していると一瞬で姿を消すため「ついでに部屋んぽ」と思ってない限りは優しく捕まえてケージに戻します。
個体によっては威嚇したりファイティングポーズまで取ってヤル気満々の場合もあるので、その場合は皮手袋を装着してから捕まえるか、カメレオンが乗っても問題無い強度の棒等に乗せてケージに戻します。
☆番外編 ペペ君の場合
ペペ君、実は名前を呼ばれると反応します。
部屋んぽ中やケージ内でのんびりしている時に「ペペ君」「ペペちゃん」と呼ぶと反応して寄って来るため居場所が丸分かりです。
しかし、人に慣れていてもカメレオン。
姿を隠す時は「オオ○ズチか!」というくらい分かりません。
突如始まる「ペペ君を探せ」にお手上げで名前を呼ぶと、満足気な体色とドヤ顔をしながらペペ君は姿を現すので遊ばれてる感じがします。
流石はワイルド個体です。
2,屋内の場合
ケージから生体が逃げ、しかも飼育室内のドアが開いていた場合です。
屋外に逃げる可能性もあるため急いで探します。
☆こんな場所を探してみよう!
- 風呂場
湿気もあり、乾燥地帯が相当好きな種類でなければけっこうな確立で風呂場にいたりします。しかし、排水溝に入り込む可能性があるため、ドアが開いてる開いてないに限らず、ある意味最初に調べるべき場所と言えます。
- 台所
こちらも何故かいることの多い場所です。
風呂場と同じように排水溝や換気扇があるので近くに逃げていないか確認しましょう。
- 玄関
純粋に玄関に向かっている事もあります。
その場合は郵便受けも確認し、隠れられそうな隙間があればすぐに確認します。
- 洗濯機
洗濯機の中も確認しますが、洗濯機の後ろ側も確認します。
暗くて狭い場所を好む種類が多いので意外といたりします。
- 観葉植物
屋内に観葉植物を置くのは珍しいことではありませんが、この観葉植物の幹や葉っぱにいることもあります。カメレオンやカナヘビは登りたがるので確認しておきましょう。
- トイレ
こちらも意外といたりします。
どうやって入ったのか聞きたくなりますが、トイレの後ろにいる事もあるので探してみましょう。
これらの場所を確認したら外界への道を塞ぎ、まだ見ていない部屋や廊下を捜索します。
■屋内の悲劇!まさかの「アレ」に…
私は出くわした事が無いので使ったことがありませんが、ネズミやゴキブリ退治用のトラップを使っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
意外とこのトラップに脱走した個体が引っ掛かってしまい、そのまま亡くなってしまうことがあるのです。。そのためトラップを使っている場合はトラップも確認しましょう。
このトラップ内の「トリモチ」はかなり強力で、小型のトカゲやヤモリ、ヘビ等は身動きも取れずに衰弱してしまい、最悪の場合は亡くなってしまいます。
何とか見つかり生きていた場合は生体からトラップを外します。
まずは小麦粉をまぶしてトリモチのベタベタを軽減&他の場所にくっつくのを抑制します。
次にサラダ油を染み込ませたキッチンペーパーや綿棒で馴染ませるようにトリモチだらけの体を拭き取ります。
次に油を落とすために温水浴をさせます。油もトリモチも1回では取りきれない事もあるため、まだベタベタが残っている場合は軽く小麦粉をまぶしてくっつくのを防ぎます。
脱皮が始まれば残ったトリモチもキレイに取れますが、脱皮まで大分期間があり、生体の体力が落ちていないようであれば、少し日を置いてから再び油を馴染ませてから温水浴をします。
■大切な家族が玄関で…
私がまだ学生だった時代、友人の1人が1匹のヘビを飼いました。
黄色い体色に赤い目が可愛らしいその子ヘビは大切に飼育されていましたが、ある日事件が起きます。
冬の寒い日に脱走してしまったのです。
慌てて探す友人でしたが見つからず、その両親は無関心で「どうせヘビだから」と言った感じだったと友人は当時泣きながら語っていました。
雪国の冬の寒さはその子にはとても耐えられるものではなく、翌日子ヘビは玄関の隅で小さなトグロを巻いたまま凍ったように亡くなっていたそうです。
いくら無関心とはいえ両親の態度には甚だ怒りを覚えますが、友人の涙、そして凍え死んだ子ヘビの不幸は今でも忘れられません。
3,屋外の場合
正直言って誰も救われない展開だと思います。
小型種であれば、まず見つからない上にカラス等に捕食される可能性もあります。
オオトカゲや大型のヘビであれば確実にご近所さんに迷惑をかけてしまいます。
「日頃の管理が、ずさん」と言われたとしても、屋外に脱走させてしまったという事実は変わらないので、しっかりと現実を受け止めて責任を持って探しましょう。
・小型のトカゲやヤモリ等の場合
警察に相談しましょう。
写真や特徴を書いた貼り紙をさせてくれる事もあります。生体はしっかり探しましょう。
・カメレオンの場合
カメレオンの屋外脱走は国内ではあまり聞きませんが、海外ではペットとして飼育されていたカメレオンが帰化してしまった話もあります。
個体をそのままベランダや庭に置いて目を離していれば屋外に逃げる可能性は十分あります。警察に連絡して探しましょう。
・オオトカゲ、ヘビ
屋外への脱走が分かったらすぐに警察に電話しましょう。
そして自分も責任を持って探しましょう。脱走した彼らに悪気はありませんが、周りの人はパニック状態です。
脱走した爬虫類達のニュースについて
管理が不十分だったために逃げ出した爬虫類達。
全く悪気は無いのに屋外に脱走したことでニュースになってしまうことも少なくありません。
最近では「大型のヘビが逃げ出して見つからない」というニュースもあります。
横浜でヘビ脱走 専門家に聞く「人に危害を加えた場合の責任はどうなるか」
今回逃げたヘビは体長約3・5メートル、体重約13キロで黄色をしている。市の許可を得てマンション2階の居室で飼育していた男性は6日午前8時ごろに外出し、午後9時ごろ帰宅。飼育用の木箱の中にいないことに気付いた。ヘビはケージのカギを壊し、換気のために開けていたベランダの窓の隙間から逃げたとみられ__
引用:東京スポーツWeb
そのヘビも爬虫類飼育の中でも飼育する人を選ぶというか、本当に責任感があってヘビの扱いや特徴、絶対に逃がさないという工夫もできる「慢心をしない人」じゃないと飼育は難しいのでは、と思います。
また、ミルクスネークやキングスネークの仲間は猛毒ヘビである「サンゴヘビ」に擬態しているため、知らない人が見れば危険な生き物と判断されてもおかしくありません。
オオトカゲについても脱走したことがニュースとなり、その様子が写し出されることも多々あります。
爬虫類達は飼育者にとっては可愛い動物ですが、周りから見れば受け入れがたいのが現状です。
爬虫類飼育者・あおいも複雑な心境
「特定動物の飼育」について思う事
皆様もご存知は通り、私は爬虫類飼育者であり、カメレオンについてを基本的に執筆しています。
しかし、それ故にどうしても聞かれてしまうのが「特定動物」についてです。
特定動物を簡単に説明すると「人間やその財産(所有物等)に危害を与える動物」です。
もちろん飼育の許可は簡単に取れず、厳しい審査や検査等をして初めて取ることができます。ケージの大きさや強度、生体の運搬方法等も厳しく審査されるため、許可が下りるにはかなり時間がかかります。
特定動物の飼育に関しては、私は何とも複雑な気分であり、相当な覚悟がなければ決して手を出すべき生き物ではなく「しっかりと責任を持って飼える人なら良い」というスタンスでした。
特定動物の飼育は令和2年6月1日から動物愛護の観点で新規での飼育は不可能となりましたが「禁止される前に駆け込むようにして許可を取った方もいたのかも知れない」「もう手に入らない一品物のアクセサリーのように特定動物を飼育する人も出てきそう」という懸念もありました。
YouTubeでも上のニュースで今回逃げ出した種類と同じ種類を飼育している方がいますが、ヘビの扱いに長け、種類や個体としての性格や生態を理解した上でしっかりと向き合い、施錠等も怠らず、飼育する家も簡単に逃げ出せないような工夫がされていました。
本気で飼育する人は飼育環境も本気ですし、
周りに迷惑をかけないための努力も徹底しています。マイクロチップも入れています。
これらのことは当たり前でありながら、何より飼育している大事な家族のためでもあります。
しかし、今回の脱走は今までの脱走事件よりタチが悪いと感じました。ちゃんと許可を取っているにも関わらず・・とのことでした。
最初は「カギが壊された」と言う話でしたが、今では無施錠の可能性、さらには換気で窓を開けていたこと、目を離していたこと等が次々と明るみに出ました。
ペットが逃げたら探すのは当たり前ですし、
「特定動物が逃げ出した」と聞けば殆どの方が恐怖を感じます。
逃げ出したヘビが捕獲されるまでは誰も安心できないのです。
このヘビは大蛇の中でも割りと大人しく、体に秘めたポテンシャル故に「危険」ではありますが「凶暴」「獰猛」ではありません。また、ヘビはトグロを巻けばかなり狭い箱の中にも収まる柔軟性も持ち合わせるため、中々見つからないのはその性質も関係しているかも知れません。
まとめ
最近は爬虫類飼育者も増えてきて、爬虫類も少しずつペットとして浸透しつつあります。しかし、屋外に脱走させれば周りに迷惑をかけてしまい、爬虫類やその飼育者も「悪いレッテル」が貼られて余計肩身が狭くなってしまいます。
皆が程好い距離感で、飼育されている個体も飼育者も幸せに平和に暮らせるようにするためにも脱走対策をしっかりしていきましょう。
その対策に、このページが役に立てたら私もとても嬉しいです。