小さな体と短い尻尾♪ヒゲコノハカメレオンについて
ヒゲコノハカメレオンは現在では入荷が見られないものの、一昔前はコンスタントに輸入され、その小さくコロンとした可愛らしい見た目と飼いやすさから高い人気を誇っていた小型カメレオンです。
ヒゲコノハカメレオンとは何ぞや?
ヒゲコノハカメレオンはかつて、「Rampholeon(カレハカメレオン)属」でしたが、現在では生息地の地理的な違いや形態学的な理由から「Rieppeleon(チビオカメレオン)属」という新しい属に移されました。
「ヒゲコノハカメレオン」という流通名だけでなく、他にも「タンザニアコノハカメレオン」「ヒゲカレハカメレオン」「タンザニアピグミーカメレオン」とも呼ばれています。
「ヒゲ」が示す通り、顎下に1本だけちょこんと生えたチョビヒゲ状のクレストがトレードマークです。
尻尾がとても短く、ピコピコと動かす事はできても短すぎて物に巻き付ける事が殆どできません。
また、その名の通り落ち葉や枯れ葉に擬態しており、全長も6cm前後しかない小型種です
体色は基本的に灰褐色〜黄褐色で、体側に焦げ茶色のやや太めのラインが入ります。
興奮すると、このラインを中心に4〜5本の細いラインが平行して浮き上がります。
1,性格はどうなの?
種類によっては協調性がハッキリしているカメレオンの仲間の中でも非常に大人しい種類で、複数匹を同時に同じケージで飼育する事ができます。
2,生息地は?
ヒゲコノハカメレオンの生息範囲はかなり広いと考えられており、タンザニアとケニアが主な生息地ですが、ウガンダ、コンゴ、ソマリア、ギニア等の広範囲にも生息しているとされています。
3,どんな物を食べているの?
ヒゲコノハカメレオンは昆虫食で、
自然下では口に入るサイズのバッタや羽虫、クモ等を捕食しています。
餌を見つけると、その小さな体からは想像もつかない程の素早さで舌を発射し獲物を捕らえます。
飼育下ではイエコオロギやフタホシコオロギのSSサイズやレッドローチのSサイズを中心にハニーワームのSSサイズやショウジョウバエ等の小型昆虫で飼育ができます。
4,繁殖形態は?
ヒゲコノハカメレオンは卵生のカメレオンです。
交尾して1ヶ月半程すると、地面に穴を掘って産卵します。
産まれたばかりの卵は白く、大きさは小豆くらいで、その数は4〜6個程です。メスの体格によっては10個も産卵する事があります。
5,どうして輸入がなくなってしまったの?
ヒゲコノハカメレオンは10数年前まではコンスタントに入荷がある人気のカメレオンであり、1度に大量に入荷しては1匹5000円程で販売されていた事もありました。
しかし、生息地の環境破壊や乱獲等の様々な問題を受け、輸出国であるタンザニアが自然保護のために動植物の輸出を停止したため入荷が途絶えてしまいました。
コノハカメレオンの仲間自体もサイテスの位が上がったため、タンザニア以外の国からの入荷は絶望的なものになっています。
◆ヒゲコノハカメレオン最後の入荷日(?)に立ち会ってしまった筆者
かつては大量入荷され、安価で販売されていたヒゲコノハカメレオン。当時の私はまだ学生でしたが、学生のお小遣いでもペアでお迎えできる程で、お迎えしたペアを愛でつつ彼らについての飼育方法や特徴を卒業制作していました。
しかし、いつしかヒゲコノハカメレオンの姿を店頭で見る機会が減っていき、数年前に2ペア見たのが最後となってしまったのです。
その際店員さんからは「もう最後の入荷かも知れない」と言われ、お値段も1匹あたり15000円位まで高騰していました。
結局そのペアを迎える事はありませんでしたが、後日お店に行くとすでにそのペアはいなくなっていました。今思えばヒゲコノハカメレオン最後の入荷日に立ち会っていたのだと、ちょっと感慨深いものがあります。
ヒゲコノハカメレオンの飼育方法について
1,ケージはどんな物を使う?
ヒゲコノハカメレオンは小型種なので殆どスペースを取らず、爬虫類専用ケージの小さい物で飼育できる他、30〜45cm水槽に網ブタをした物やプラスチックケース、衣装ケースで飼育ができます。
2,温度設定はどうする?
ヒゲコノハカメレオンは小さい体ではありますが、カメレオンの中ではかなり丈夫な種類という印象があります。
飼育には23〜27℃位が適温ですが、一時的であれば低くて20℃前後、高くて30℃までは耐えられます。
エアコンの効いた部屋であれば温度設定で簡単に飼育温度を保つ事ができますが、無い場合はフィルムヒーターをケージの1/2〜1/3の範囲に敷いて温度計を取り付けます。
3,湿度の維持はどうする?
湿度はなるべく60〜70%を保つようにしており、霧吹きを使う以外にレイアウトとしてポトス等の観葉植物や生きた苔を底床の一部に敷く事で湿度を保っていました。
また、これらの植物は水分量が不足すると萎びたり枯れてくるためケージ内の湿度や水分量を見るバロメーター的な役割も担ってくれます。
4,紫外線はどうする?
生息地が森林地帯の地表付近や茂みの中という事もあってか、他のカメレオン程紫外線は必要ではないです。
ですが、脱皮や代謝のために1週間に1度は30分程日光浴させていました。
気になる場合は弱い紫外線ライトを使うのもオススメです。
☆当時はこんな方法も使ってました!
紫外線が他のカメレオン程重要でないヒゲコノハカメレオンの飼育には日光浴が少ない代わりに、餌の時にビタミンD3入りカルシウム剤をまぶしたコオロギを与えていました。
クル病防止のためというのもありましたが、これが意外と良く、冬場等の殆ど日光浴ができない時でもヒゲコノハカメレオン達は元気いっぱいでした。
5,底床はどうする?
底床には細かいパインチップを使い、1度水を含ませた物を固く絞ってからケージ内に敷いていました。
レイアウトもしたかったので、手前を約3cm、奥側に行くに連れて高さを上げて深い所で6cm程にしました。
6,レイアウトにはどんな物が良い?
これに関しては「飼育者のセンス」としか言い様のない部分が多いです。
人工ツタや人工植物、オカヤドカリ用のジャングルジムもヒゲコノハカメレオン飼育のレイアウトに使う事ができます。
自然な雰囲気を目指したい場合は観賞魚・爬虫両生類用に販売されている流木や生きている苔の仲間、観葉植物を植えると自然な雰囲気に近付きます。
■湿度と自然を意識し過ぎて大事故に!?
これは当時聞いた話ですが、湿度管理と自然の雰囲気を意識し過ぎて水苔のロングタイプを多用した結果、飼育していたヒゲコノハカメレオンが溺れて死んでしまったという事例がありました。
どうやら水をたっぷり吸った水苔に足を取られ、そのまま抜け出せなかったようです。
体が小さい分このような事故に巻き込まれやすい面があるので、今後飼育する機会ができたら気を付けるべきポイントと言えます。
■脱皮中は気を付けて!
ヒゲコノハカメレオンに限った話ではありませんが、脱皮中に霧吹きで水をかけると脱皮の皮が貼り付いたり剥けなくなってしまう「脱皮不全」になってしまいます。
特に小型種は手に古い皮が残ってしまうとグローブのように固くなってしまい、そのせいで手が腐ってしまったりストレスで死んでしまう事もあります。
7,給水はどうするの?
他のカメレオンよりシビアなのが給水です。
やはりカメレオン、動きがないと水とは認識しない他、ドリップボトルだとタイミングが合わずに飲めず仕舞い、水入れだと深さによっては溺れてしまう事すらあります。
この時かなり役に立つのが霧吹きとスポイトです。
霧吹きを観葉植物やケージの壁に吹き掛けて水滴を作るとすぐに反応して水を飲んでくれます。
他にもスポイトでポタポタと水を足らすだけでも反応してくれるため、満足するまで水を飲ませてあげましょう。
霧吹きは湿度を保ったり給水も兼ねて1日4〜5回しましたが、給水だけの場合は1日4回はスポイトで行いました。
8,給餌について
ヒゲコノハカメレオンは小型種という事もあり、餌となる昆虫も小さいサイズを用意する必要があります。
コオロギであればSS、レッドローチであればSサイズがオススメです。
与
■なめてはいけない…!テ◯フォーマーズ!
なんの事かというと、まぁゴキブリの事です。
先程から「レッドローチ」が出てきますが、コレ、ゴキブリの仲間です。
よく「壁を登れない」と言われているのですが、プラスチックケースやガラス水槽のシリコン部分を持ち前のガッツで登る輩がたまにいます。
お陰様で部屋からヒョコッと出てくる事もあったため、私はちょっとトラウマです。
レッドローチを餌として使う場合は他の昆虫より更に脱走に気を付ける事を強くオススメいたします。
■サイズミスやタイミングが命取り!?
小さい昆虫が主食のヒゲコノハカメレオンですが、餌のサイズが大きかったり餌が空腹状態だと思わぬダメージを負ってしまう事があります。
他の爬虫類にも言える事ではありますが、サイズが適していないコオロギが生体に逆襲してしまい、それがトラウマになってしまって餌を食べなくなるケースがあります。
また、コオロギ等の「雑食性」の昆虫を空腹状態で生体に与えると生体に攻撃する頻度が上がるため、買ってきた餌用昆虫をすぐに与えるのは得策とは言い難いです。
9,その他の日常的な管理は?
どのような飼育環境にしたかにもよりますが、観葉植物や苔を多用している場合はフンの除去をします。
小豆サイズのフンですが、湿度が高いとすぐにカビが生えてしまうので見映えのためにもピンセットですぐに取り除きます。
また、ケージの内側側面に付く水垢等の汚れも拭き取るとケージ内も見やすくなります。
ヒゲコノハカメレオンの繁殖について
「こんなちっちゃなカメレオンも自家繁殖できるの!?」と思った方もいらっしゃると思いますが、意外と可能だったりします。
ペアを大切に飼育し、産卵のための穴を掘れる場所や餌もしっかり与える事で産卵に至る事も多く、かつて大量に入荷していた頃はケージの中で知らない内に産卵していて気付いたら幼体が歩いていた、なんて事もあったそうです。
1,ヒゲコノハカメレオンの雌雄判別について
小さな体ではありますが、雌雄の違いが分かりやすい種類です。
オスの特徴
- メスと比較して小さい。
- メスよりスマート体型。
- メスより体色は明るめ(個体差あり)。
- 生殖器の関係で尻尾がやや太めで少し長い。
メスの特徴
- オスより体が大きい。
- 体型がコロコロしている。
- 体色はやや暗め。
- 尻尾は細くて短い。
2,繁殖方法について
ヒゲコノハカメレオンの繁殖はカメレオンの中でも比較的簡単です。
というのも、入荷した段階で妊娠している「持ち腹」状態のメス個体も多く、適切な飼育管理をしていれば底床を掘って産卵し、約2ヶ月後には小さな幼体が歩いている事もあります。
①雌雄を一緒のケージで飼育する
まずは同居させましょう。
ヒゲコノハカメレオンは協調性が高いので、ケンカに発展する事は殆どありません。
この時、妊娠していないメスは灰褐色の体色をしており、メスを意識したオスはメスの気を惹こうと明るめの体色に変化します。
②メスの体色が変わるのを待つ
メスがオスのアプローチを受け入れると、自分の後を追うオスを嫌がらずに交尾を始めます。
ヒゲコノハカメレオンの交尾時間はそれほど長くなく、数分で終わってしまう事もあるため、その瞬間になかなか立ち会えない事も多いです。
雌雄の同居を開始してからメスがいつもの灰褐色ではなく黒褐色になったらそれが「妊娠のサイン」となります。
③栄養をつけよう!
メスの体色が変わると、オスはメスに興味を無くすためそのまま同居を続けてもリスクはかなり少ないです。
その代わりメスは非常に食欲旺盛になり、オスの分の餌も食べてしまう事があります。
④給水に注意
妊娠中のメスは水を飲む頻度が増えます。
給水が足りないと体調を崩しやすいので注意しましょう。
また、水分不足だと産卵が上手くできず、卵詰まりになって死んでしまう事もあるため、しっかり水を飲んでいるかも確認が必要です。
⑤食欲が落ちてきたら産卵間近!
妊娠発覚から1ヶ月〜1ヶ月半程経過すると、メスの食欲が急に落ちてきます。
中には少し食べる個体もいますが、殆どの場合は水だけ口にするようになります。
ここまで来れば産卵間近です。
⑥産卵後のケアはしっかりと!
産卵後のメスはコロコロした体型から一気にスマートかつ薄くなるので体力回復のためにしっかり餌を食べさせます。
3,卵のお世話について
ヒゲコノハカメレオンは地中に穴を掘って産卵をします。
この時飼育者様にもよりますが、
敢えて掘り起こさない方が孵化率が高いとも言われています。
その場合は「ケージ内の環境ごと良好に努める」必要があるため、地中の環境維持に自信が無い場合は掘り出してケースに入れ、個別に孵卵します。
◆穴掘りダルい?
ヒゲコノハカメレオンは地中に穴を掘って産卵をする種類ですが、掘る場所が無かったり、あるいは底床が気に入らないと穴を掘らずにお気に入りの場所でそのまま産卵する事があります。
これは他の種類にも見られ、エボシカメレオンも同じ行動を取る事があります。
孵卵用ケースにはバーミキュライトやハッチライト等を敷き詰め、卵を等間隔に並べます。
この時、卵は敷物の水分を吸って膨らむため、隣同士が触れないようにある程度広めに間隔を空けるようにすると卵の生存率が良くなります。
次に孵卵温度ですが、我が家では24〜27℃を維持しながら孵卵し、2ヶ月程で孵化しました。
4,幼体のお世話について
孵化から2〜3日経つと卵黄も吸収し終わり、ちょこちょこと動き回るようになります。
その様子が見られたら、トビムシやコオロギのピンヘッドを餌として与えます。
カルシウム等のサプリメントもほんのりまぶしてから与える事で、不足しがちなカルシウム等の栄養を補給させ、幼体の健やかな成長を促せます。
幼体達は体はとても小さいですが、舌をちゃんと伸ばす事もでき、枝も登る事ができます。
しかし、捕食はかなり下手です。我が家では、ある程度育つまでは枝等の障害物や誤飲の原因となるパインチップやバークチップは使いませんでした。
その代わり、ケージ内の床にはペットシーツやキッチンペーパーを、掴める物としてオカヤドカリ用のジャングルジムを入れていました。
幼体はデリケートなので、温度の急変や湿度が低くなり過ぎたり、逆に風通しが悪くて蒸れないように注意が必要です。
成長は2〜3ヶ月で2〜3cm前後の大きさに成長するため、そこまで成長させられるかが山場になります。
まとめ
今回は、今は流通していなくても高い人気を誇る小型カメレオン「ヒゲコノハカメレオン」についてご紹介させていただきました。
人によって飼育環境や飼育の工夫は様々なので「これが一番」という事はありませんが、再び輸入が始まる事があれば是非参考にしていただければ私も幸いです。
また、繁殖については無理にとは言いません。ただ、ヒゲコノハカメレオンの寿命自体が2〜3年程という儚い一生であり、輸出が再開したとしても昔のように頻繁ではない可能性があります。もしペアを迎え入れ、血筋を絶やさない決意がある方にのみ努めていただければと思います。