エボシカメレオンについて
エボシカメレオンはパンサー、ジャクソンと共に「カメレオン御三家」と言っても過言ではない人気種です。
また、値段や丈夫さから「カメレオン飼育の入門種」とされる事もあります。
しかし、成体になったエボシカメレオンの堂々とした姿や立派に伸びたカスク、派手な体色は筆舌し難い美しさがあり人気種の名は伊達ではありません。
1,エボシカメレオンってどんなカメレオン?
エボシカメレオンは「ナミカメレオン属」というグループに含まれており、学名は「Chamaeleo calyptratus」です。
この「calyptratus」にはギリシャ語で「帽子を被った」の意味があるとされ、その特徴的なカスクを帽子に見立てています。
他にもかつては「ヘルメットカメレオン」と呼ばれたり、海外では「Veiled Chameleon(ベールドカメレオン)=ベールを被ったカメレオン」と呼ばれています。
「エボシカメレオン」という和名も高く伸びたカスクが平安時代の貴族が被っていた「烏帽子」のように見えた事からそう呼ばれるようになったと言われています。
この立派なカスクはオスだと非常に顕著で、カメレオン全種の中でも最大です。メスはオス程ではありませんが、それでも立派なカスクを持っています。
生まれたばかりの幼体の頭部には親のように立派な「烏帽子」はまだ無くツルンとしており、体色も相まって枝豆や空豆のようです。
栄養状態や環境にもよりますが、このカスクは生後約1ヶ月程から伸び始め、3ヶ月目には自分の頭部に近いサイズまで高さが出てくる事もあります。
成長すると30〜50cm程になりますが、かつては60cm近く成長した個体もいたそうです。メスの方がオスより小さいですが、それでも中型カメレオンの成体より遥かに大きいです。
2,どんな所に生息しているの?
エボシカメレオンは今では海外国内問わずブリード個体をよく見かけますが、原産国はイエメンやサウジアラビアの緑が多い地域に生息している種類です。
この地域は雨季と乾季があり、春夏は雨が降り冬はほとんど降らないという環境となっています。
3,エボシカメレオンの体色は?
体色は幼体だと明るく綺麗な黄緑ですが、成長すると青みがかった黄緑になってきます。
また、周囲の環境や気分によって体色を変化させ、オスは不規則に黄〜オレンジ色のバンド模様を発現し、そのバンドを茶褐色のラインが縁取っています。それだけでは終わらず、さらに濃い緑色の細かい水玉模様や不規則なラインを全身に浮かび上がらせる等かなり派手な体色になります。
メスはオスに比べると控えめな体色で、やや暗めの黄緑〜灰緑色の体色に白のラインというのが基本ですが、妊娠すると体色は激変し、明るい緑色の体に濃い緑、オレンジの斑点模様となります。
☆実はカラーバリエーションが豊富!?
エボシカメレオンは体色の個体差も大きく、中には青みがかった緑どころかもう「碧色」と言って良いような体色の個体までいます。
また、ブリードが盛んに行われている種類とあって品種化されていたりもします。「トランスルーセント」「パイド」は最近ペットショップでも見かける機会が増えており、緑色の体色に白く抜けた部分があったり透明感のあるピンク色が美しい品種です。
品種として固定化したのかは定かではありませんが、かつては全身真っ白で目が黒い個体が生まれた事もあり、これからも変わった体色が現れるかも知れないという期待が高まる種類です。
4,何を食べているの?
カメレオンはほぼ全ての種類が昆虫や小鳥、小動物を食べる肉食性の動物ですが、エボシカメレオンは成長に伴って植物質の物を食べるようになるという特徴があります。
個体の好みもありますが、レタスや豆苗、小松菜の他にもトマトやイチゴ、ミカン等も食べてくれます。
植物はリクガメのように主食にはなりませんが、水分補給や昆虫からは摂取が難しい栄養を補給する事ができます。
◆なんてこったい!食性とレイアウトの問題
カメレオンや樹上性爬虫類の飼育となると流木や人工ツタを使って足場を作り、さらに植物を根付かせて自然な感じで飼育したい…と思いを馳せる方も多いと思います。
飼育する種類が植物にイタズラしない種類であれば問題はないのですが、エボシカメレオンはそうもいきません。
カメレオンの仲間でも一部の種類、パンサーカメレオンやナマクワカメレオンは植物を食べる事が確認されていますが、エボシカメレオンの植物好きは彼らとは比較にならない程なのです。レイアウトにポトス等の植物を使うと次第に葉が無くなっていき、最後は茎の根元しか残らない程食べてしまいます。
こうした特徴からエボシカメレオンのレイアウトには人工植物が使われる事も多いです。それでも小腹満たしも兼ねて本物の緑をレイアウトに取り入れたい方はポトスを定期的に購入するか栽培しましょう。
Q,どうしてエボシカメレオンはポトスを食べても平気なの?
A,おそらく成分に対して耐性があるから。
観葉植物といえば、見た目や色が美しく見てるだけでも癒されるわけですが、中には有毒植物も多く含まれています。
先程から出てくる「ポトス」も有毒植物として知られており、「パキラ」と並んで愛鳥家から注意されている植物だったりもします。
そんなポトスをモリモリ食べてしまうエボシカメレオンが無事なのは何とも不思議かも知れませんが、それはおそらくエボシカメレオンがポトスの毒成分を分解、あるいは無毒化できるからです。
ウサギやリクガメ等の草食動物はある程度の毒に対して耐性があると言われており、草食動物とまではいかなくても植物を食べるエボシカメレオンにも同じ事が言えると思います。
どうであれ、彼らにとっては「無害」だからエボシカメレオンもポトスをモリモリ食べるのでしょう。
5,性格は?
エボシカメレオンは幼体の頃はケンカもせず、仲良く同じケージで飼育する事ができます。
そのため爬虫類専門店等ではまだまだ小さい幼体達を衣装ケースをケージにして飼育管理している事もあります。
しかし、成長するにつれて少しずつ気が強くなっていき、基本的にオスは排他的な一面が見られるようになります。メスは性格が比較的穏やかなため、複数飼育が可能です。
個体差や人慣れの度合いにもよりますが飼い主に対しても排他的な一面を見せる事もあり、その時は体を縦に扁平にして大きく見せながら体色をド派手に変化、さらに「ファーッ!」という噴気音を発し口を大きく開けて噛みつこうとしてきます。
ケージの掃除やハンドリングの時にやる事が多く、噛む力も強く牙も鋭利なので慣れていない個体の場合は革手袋を使ったり長い棒に掴まらせて待機場に移動させます。
逆に人に良く慣れた個体はそのような行動はせず、自分から飼い主の元に寄ってきたり腕に掴まったまま大人しくしています。
6,飼育に必要なアイテムについて
エボシカメレオンは高く伸びるカスクと成体になった時の大きさを考慮して高さもある広いケージがオススメです。
小さいうちは衣装ケースや爬虫類用のレギュラーサイズのケージで飼育できます。
レイアウトは成長段階に合わせて止まり木の太さを変えるようにしましょう。
流木や人工ツタ等様々なサイズがあるのでその都度買い換えたりします。
給水器は必ず取り付けるようにし、ドリップボトルを使う場合は水受けも設置するようにします。他にも小さなプラケースに水を入れてエアレーションをかける方法もあります。
風通しを確保するためにファンやサーキュレーターもあると便利です。
ライトは紫外線ライトが必要で、カメレオンの代謝にも深く関わってきます。
しかし、カメレオンは強い光を見ると目に炎症を起こしたり触って火傷する事もあるため、設置する時は距離や位置に注意が必要です。
ヒーターに関してですが、体を暖めるためのバスキングスポットとしてバスキングライトを使ったりシートヒーターを使って保温します。
エボシカメレオンは高温、乾燥に強い種類ではありますが、30℃を超えないよう、乾燥し過ぎないように注意が必要なので温度計、湿度系もあると環境を把握しやすくなります。
他にも餌を与えるためのピンセットや給水、湿度のための霧吹き、ケージの下部に敷く床材も用意しましょう。
7,雌雄判別とそれぞれ気を付けるべき問題について
普段は繁殖方法についても書いていますが、エボシカメレオンは卵生のカメレオンですが、産卵数がかなり多く、中には90個近く産卵した個体もいたそうです。
この卵が全て無事孵化する可能性も0%ではないため安易に繁殖は考えない事を推奨いたします。
①雌雄判別方法
エボシカメレオンは
- オスの方が大きく成長し、カスクも高くなります。
- メスはオスと比べると一回り小さくカスクもそこまで高くありません。
他にもオスの踵あたりに突起があり、
これは成長途中でカスクがあまり成長していなくても見られる特徴です。
もしエボシカメレオンを迎え入れる時に性別にもこだわりたい方は是非見比べてみてください。
②性別の違いによる問題について
雌雄で性質や問題が異なる事は多くの生物に当てはまる事ですが、エボシカメレオンにもそれが当てはまります。
先程も少し触れましたが、成長したオスは排他的な一面が出てくるため、場合によってはケージの掃除やハンドリングもかなり大変になる事もあります。
また、カメレオンのオスは2本1対の「ヘミペニス」を持っており、交尾の際には片方を使います。しかし、何らかの理由でこのヘミペニスが飛び出して戻らなくなる「ぺニス脱」というものがあり、放置すると壊死してしまうためすぐに動物病院で診てもらう必要があります。
エボシカメレオンのメスは比較的穏やかな性格ですが、成体になると胎内に大量の「無精卵」を抱えてしまいます。これに気付かずメスの個体が「卵詰まり」で突然死してしまったというケースも多いです。
8,エボシカメレオンの幼体を飼育する時の注意点について
初めてのカメレオンとして愛されているエボシカメレオンは生まれたばかりの幼体を見る機会も多く、華奢で小さな体と幼さたっぷりの顔が愛くるしいです。
①水入れで溺れてしまう
小さな体には危険がいっぱい、一見安全そうな物も命を奪ってしまう事があります。
この水入れの事故もよくあるケースの1つで、小さな幼体が水入れから水を飲もうとして落ちてしまい、そのまま溺れてしまうというものです。
解決策として霧吹きをこまめにして水を飲ませてあげるか、小さなお猪口を水入れにしてエアレーションをする、水入れの中に人工植物を入れて足場と脱出経路を作る等があります。
②栄養失調
大人になれば野菜大好きなエボシカメレオンも子供の頃はお肉大好きなわんぱくちゃんです。
そんな子供達は食欲旺盛で代謝も高いため、栄養たっぷりの昆虫をこまめに与える必要があります。もちろんカルシウム等の栄養を補給するためにもカルシウムパウダー等のサプリメントを餌として与える昆虫にまぶしてから与えます。
栄養が足りていないとあっという間に栄養失調になってしまい、そのまま死んでしまう事もあるので注意が必要です。
③脱走
衣装ケースで蓋をしないで飼育したり、ケージが開けっ放しだと発生する事案です。
体が小さいので見つけるのも大変ですし、予期せぬ場所にいて事故に巻き込まれてしまう事もあります。特にドアに挟まれたり、同居していたペットに見つかったり、中には屋外に…なんて事も無くは無いです。
衣装ケースでの飼育の際は網状の蓋を購入するか、蓋を加工する等して脱走防止に努めたり、中に入れる物を高く積みすぎないようにします。
カメレオンは前肢の爪さえ引っ掛かってしまえば持ち前のパワーで簡単に乗り越えてしまいます。
脱走した場合は部屋の床から高所までしっかり探します。中にはカーテンを登ってエアコンの上に行き飼い主を見下ろしている事もあります。
まとめ
今回はカメレオンの入門種であり人気種・エボシカメレオンについてご紹介させていただきました。
最近ではペットショップでも見る機会が増えており、初めて見たカメレオンがエボシカメレオンだったという方もいると思います。
彼らは確かに他のカメレオンより丈夫さや安価な所がありますが、飼育にはそれなりに気を使う必要もありますし、たまに神経質な部分を感じさせてくる事もあります。
ですが、それをもって余りある美しさや飼育の楽しさを教えてくれる種類でもあり、慣れた個体は手からイチゴやレタス等を食べてくれます。
また、立派に育ったエボシカメレオンの迫力や色彩美は飼育している人にしか味わえず、個体差があるその体色はより特別な物なのです。