カメレオンの怒るサイン・理由とその対処法
爬虫類は「表情や感情がよく分からない」と言われる事が多く、それを読み解くには時間をかけて向き合っていく必要があります。
カメレオンは爬虫類の中でも比較的表情や感情が分かりやすいため、その点に関してはかなりありがたい動物です。
しかし、いざ怒りだすとタイミングによっては何故怒りだしたのかも分からず、口を開けて威嚇されたり時には噛み付こうとする事もあるため、悩まされる事もあるのではないでしょうか。
1,カメレオンが怒っている時のサインは?
これは「カメレオンのサイン」の記事でもご紹介していますが、ここでは「怒り」に限定させていただきます。
カメレオンの「怒り」はヒメカメレオンのような体色変化が乏しい小型種では分かりにくく、体色変化が激しい大型種であるほど分かりやすい傾向があります。
①体色が派手になる
オスがメスへのアピールのために鮮やかになったり、カーペットカメレオンのように妊娠中のメスだったという場合もありますが、単独飼育の場合で飼い主や同居人にこの体色を見せてくる場合は怒りのボルテージが上がっている場合があります。
怒りの場合は次に紹介する行動も併せて行う事も多いので単なる「興奮状態」とは違います。
②口を大きく開ける
体調が悪いわけでもなくいのに体色を派手に変えて口を大きく開けるのは「威嚇」「攻撃態勢」の状態です。
攻撃する気マンマンですのでカメレオンが相当お怒りなのが分かります。
特にパンサーカメレオンやエボシカメレオン等の大型種は口を大きく開けながら勢い良く噴気音を出してこれでもかとばかりに怒りをあらわにしてきます。
③体を広げる
バスキングする時にも見られますが、体温を上げたり紫外線を吸収する場合は体色を黒っぽく変化させるため怒っている時とは全く違います。
④喉の「咽頭垂(デュラップ)」を広げる
カメレオンの喉の部分には「咽頭垂(デュラップ)」という弛みがあり、これもお怒りの時に広げる事があります。
威嚇の時以外ではメスへのアピールにも使われますが、広げられると結構目立ちます。
2,どうしてカメレオンが怒っているのか〜様々なケース〜
本来カメレオンは、どちらかというと反撃をする前に逃げる事が多かったりするのですが、様々な要因が重なって怒り、反撃、攻撃をする場合があります。
①元々気が強い
カメレオンの種類によっては気性が少々荒っぽい場合もありますが、それとは別に「その子自身の性格」というのも要因にあります。
気が強いとされるパンサーカメレオンでも穏やかで人懐こい性格の子もいれば、大人しく協調性があるとされるエリオットカメレオンでもちょっと怒りっぽい子がいる事もあります。
性格は生まれ持った個性なので尊重し、少しずつ信頼を築くのが一番無難です。
②縄張りに入られたから
カメレオンの多くは縄張りを持っており、縄張り意識が強い種類は「自分の縄張りを荒らされた」と思うと立ち向かってくる事があります。
これは私達人間でいうところの「勝手に部屋に入られた」「自分の作業スペースを断り無しに使われた」などに当てはまります。
ケージの掃除などで手を入れたり扉を開けたりすると協調性のある種類や大人しい子なら「しょうがねぇなぁ…」みたいな感じで不機嫌な暗い体色に変化して逃げていきますが、気が強い子だと「縄張りに入る事は許可しないー!」と怒り爆発で激しく抗議してきます。
③飼い主側が急な行動をとってしまった
急な行動やアクシデントというものは私達人間でもイラッとする事があります。
それはカメレオンも同じで、急に目の前で激しく動かれたり直接水をかけられたりすると驚いた反動で怒ってしまいます。
しかし、飼育環境に次第に慣れてくるとその程度では動じなくなる子もいるので向き合い方次第の部分も大きいです。
④まだまだ環境に慣れていない
迎えられてから日が浅いカメレオンは、環境の変化からちょっと神経質になっている事が多いです。
この状態のカメレオンを「ハンドリングしたいから」といって触ろうとするとかなりのストレスになりますし、恐怖から攻撃する他、その事がトラウマになり気が荒くなってしまう事もあるので注意が必要です。
⑤落ち着ける場所が無い
これは先述した項目とちょっと被る部分もありますが、カメレオンは基本的に「見つかってない」と思って暮らしている動物です。
そのためケージ内に隠れ家が無かったり、常に誰かに見られている状態だとかなりのストレスになってしまい、ケージのメンテナンスのために手を入れようものなら自分の身を守ろうと攻撃的になってしまう事もあります。
カメレオンはストレスから体調を崩す事もあるため、攻撃されるのはまだマシと思い、飼育環境や接し方を見直す必要があります。
☆番外編、嫉妬で怒る場合も!?
これは我が家の場合だけかも知れませんが、ベーメカメレオンのペペくんは嫉妬して怒る事もあります。
かつて、ベーゼちゃんの部屋んぽのためにケージから出すと、必ず「自分も出して〜」とケージでおねだりしていました。しかし、ベーゼちゃんはペペくんよりも活発な体育会系女子だったため、流石に2匹同時の部屋んぽは難しかったためペペくんはお留守番。
ようやくペペくんの番になってケージから出すと、ド派手な体色に平たいボディ、口を全開にして私に猛抗議です。
噛まれる事はありませんでしたが、私の指を角で一突きしてから堂々と部屋んぽに行くペペくんの背中はどこかイラ立ちオーラが感じられるものでした。
また、爬虫類専門店にて大型カメレオン達と触れ合ってから帰宅した際もペペくんはお怒りモードでした。
大型種のカメレオンは力が強いので私の手には所々爪痕が残っているわけですが、それが気に食わないのか、その日は終始怒り気味で過ごし、仕舞いには「ファーッ!」と怒りの噴気音も上げられてしまいました。
◆怒りはしない、でも別の方法で伝えてくる…
カメレオンの多くは体色の変化や攻撃態勢をとる事で怒りをあらわにしてきますが、ヒメカメレオンやコノハカメレオンなどの小型種は体色の変化が乏しく、怒りが伝わりにくい事がほとんどです。
どちらかというと、怒るというよりは体色を暗くしてレイアウトの枝や木葉に擬態してやり過ごす事が多く、厄介事からサッサと逃れようとします。
そんなヒメカメレオンなどはケージの掃除でプラケに移動させる際に掴んだりすると、体を「ブブブ」と細かく振動させて抗議します。
これ以上のストレスがかかった場合は「死んだフリ」までするため、初見だと肝を冷やされ、かなり焦らされる行動です。
■レアケース!心身に傷を負ったカメレオン
爬虫類専門店を訪れたある日の事、私は訳ありで値段が下げられた状態で販売されていたメスのエボシカメレオンを見つけた時の話です。
何故その子が訳ありになっていたのかというと、そのカメレオンの尻尾は他のエボシカメレオンの半分くらいしか長さがありませんでした。
樹上生活者のカメレオンにとって長い尻尾は大切な命綱であり第5の手足、そんな大切な尻尾を幼体の時に仲間同士のケンカで失ってしまったのです。
動物は手負いになると荒っぽくなる事もあり、その子も例に漏れる事なくかなり気性が荒くなっていました。
3,もしカメレオンを怒らせてしまったら
カメレオンが怒る理由、要因を知ってもお世話する以上怒らせてしまう可能性はあります。
特にメンテナンス時は縄張り意識が強い種類や気が強い性格の子だと高確率で「激おこ状態」になってしまっています。
ケース1,〜ケージのメンテナンス時〜
①扉を開けたら臨戦態勢だった場合は扉を一度閉める!
一旦扉を閉めて時間を置きます。これで臨戦態勢を解いたら再び扉をゆっくり開けます。
臨戦態勢にならなければ開けたタイミングや速度が気に食わなかった事が分かります。彼らの気が変わらない内にメンテナンスを済ませましょう。
②どうしてもケージから出さないといけないのにずっと激おこの場合
先述した方法を試しても落ち着かず、しかもケージから出さなければならない場合はカメレオンのための止まり木や掴みやすい棒状の物を利用します。
カメレオンは「より高い場所へ登ろうとする習性」があるため、頭より少し高い位置に棒や止まり木を持っていくとそのまま登ってくれる事があります。
特に怒髪天で立ち上がっている時は登ってくれやすいです。登ってくれたら室内の部屋んぽスペースに放したり、背の高い観葉植物に乗せ、家主がいない内にメンテナンスを済ませましょう。
■激おこカメレオンに素手で挑むのはNG!
カメレオンは「自然界のアサシン」というイメージからか、臨戦態勢に入られてもあまり攻撃力が無いというイメージがあるかも知れません。
しかし、カメレオンの噛む力は強く、口の中には鋭く尖った牙がノコギリのように並んでいて切断力が高い構造になっています。
ベーメカメレオン(20cm前後)くらいであってもアダルトサイズのコオロギを易々と切断するため素手で扱うのは危険です。
また、爬虫類用革手袋をしたとしても、ウスタレカメレオンやエボシカメレオン、パーソンカメレオンのような大型種に噛まれた場合、牙が通らなかったとしても万力のようにギリギリと圧迫されて怪我をする可能性もあります。
ケース2,〜湿度調整や給水時〜
①霧吹きにも激怒する場合は思い切ってミスティングシステムを導入してみるのも手!
ミスティングシステムにはタイマーが付いており、ミスティングの時間や長さを設定する事ができます。
②給水はスポイトでゆっくり時間をかけてやってみる
爬虫類用の給水器等もありますが、飲まなかったりリーチが短いと怒っているカメレオンの一撃を回避できないため、アクアリウム用の長さのあるスポイトが便利です。
スポイトに水を含んだら、怒っているカメレオンの目の前で水をポタポタと垂らしてみましょう。喉が渇いていれば、臨戦態勢を解除して水を飲みに来てくれるハズです。
また、飲ませる時もバシャッと与えるのではなく、ゆっくりと舌に含ませるように与えます。
ケース3,〜部屋んぽの場合〜
①止まり木や棒状の物を使う
こちらもケージから出す時と同じように止まり木や棒状の物を掴ませます。物干し竿に麻紐をグルグル巻いた物もカメレオンにとって掴みやすいためオススメです。
激おこしながら棒を伝って近付いてきたら、驚かせないように、かつ手に辿り着く前にケージに戻します。
②満足行くまで遊ばせてみる
活発な種類や大型種だと運動不足からストレスが溜まり、イライラしている事もあるため部屋んぽをさせた時に時間を制限せずに満足いくまで遊ばせてみましょう。
たくさん運動してリフレッシュした子は驚くほど素直にケージに戻ってくれる事があります。
満足し過ぎてその場で寝ようとした場合は飼い主さえ良ければそのまま眠らせても良いですが、困る場合はケージに移動させます。怒った場合は前述の方法でケージに戻します。
部屋んぽをする場合は窓や玄関などの「外に通じる扉」は閉め、しっかり施錠しましょう。
4,カメレオンから信頼を得るために私がやった方法について
カメレオンは怒りもしますが、それ以前に私達や回りを「よく観察」しています。
①あまりジロジロ見ない
カメレオンは他者の視線に非常にストレスを感じる繊細な動物なので、我が家ではレイアウトにも隠れ家を設けたらあまりジロジロ見ないようにしています。
②お世話をする前に「特定の行動」をする
我が家ではお世話をする直前に声をかけてみたり道具を見せるようにしています。
声がけに関しては聴力がないとされるカメレオンに聴こえているかは分かりませんが、口の動きをよく見ています。
また、給餌の時はピンセット、給水の時はスポイト、湿度管理の時は霧吹きという感じで使うアイテムを見せてからお世話をすると、最初は怒ったり戸惑ったりしていても少しずつ覚えてくれます。
☆ゴメンよ、ペペくん。飼い主のイタズラにキレるカメレオン!
「そもそもイタズラするなよ!」という話ですが、ペペくんがあまりにもルーティーンに忠実だったので少し魔が差してしまった事があります。
どんなイタズラだったのかというと、ピンセット(給餌の合図)の後にスポイトで水を垂らしてみるというものです。
実際やってみたところ、ペペくんは困惑。「あれ?ご飯は?」といった感じで水を少し飲んだ後、ピンセットを見せながらコオロギをくれない私に激怒!
「ピンセットはコオロギだろ〜!」とケージをガッシャンガッシャンと揺らし、ケージの隙間から手をヒョイヒョイ出して大暴れです。
ちゃんとコオロギを与えると満足そうに「そうこなくてはな…」と受け取って食べていました。
③運動不足にならないように定期的に部屋んぽさせる
活発な種類だったりすると、どうしてもケージ内だけでは運動不足になりやすいため我が家では定期的に部屋んぽをさせています。
ベーメカメレオンはある程度の大きさもあり、活発な種類なのでちゃんと見張る事ができれば部屋んぽできます。ベーメカメレオン以外では、ヘーネルカメレオン(ヘルメットカメレオン)も部屋んぽさせる事がありました。
5,カメレオンに噛まれてしまったら?
私は一度もカメレオンに本気噛みされた事はありませんが、大型種に噛まれた方によると流血沙汰になったそうです。
もし、飼育しているカメレオンが激怒していて本気で噛まれてしまった場合の対処方法をご紹介させていただきます。
カメレオンは噛み付くと「アグアグ」と噛み直しながらダメージを与えてきますが、大抵の場合は効果があったと感じると放してくれるようです。
しかし、ずっと噛み続けてくる場合はカメレオンの口にテレフォンカードやポイントカード(紙製ではないもの)を滑り込ませて抉じ開けます。
この時絶対にやってはいけないのは「無理矢理引き抜く事」で、これはカメレオンに限らず爬虫類全般に当てはまったりします。
無理矢理引き抜いてしまうと、噛まれた側も噛み付いた側もダメージが酷くなってしまいます。
次に傷口を流水で洗います。
洗い終わったら消毒液で傷口の消毒をしますが、傷の深さによってはかなりしみますので覚悟しましょう。
出血が止まらない場合は止血もしますが、なかなか止まらない場合は包帯や止血剤を使います。
まとめ
今回は激おこカメレオンとの向き合い方や対処方法について皆様にご紹介させていただきました。
カメレオンは基本的に「排他的」とされる種類でも積極的に噛み付こうとするほど攻撃的な子はあまり見た事はありません。
しかし、中には性格上ヤンチャな子もいますし、お世話中に怒らせてしまう場合もあります。