ベーメカメレオンについて
皆様もご存知の通り、このブログや動画でお馴染みのペペ君は「ベーメカメレオン」という種類です。
エボシカメレオンやパンサーカメレオン、ジャクソンカメレオンと比べると若干知名度が低いですが、知る人ぞ知る小さくて可愛いカメレオンの仲間となります。
1,ベーメカメレオンってどんなカメレオン?
ベーメカメレオンは「フタヅノカメレオン属」というグループに含まれている種類で、学名は「Kinyongia boehmei」です。
この「Kinyongia」は現地の言葉で「カメレオン」を指しており、流通名の「ベーメ」も学名から来ています。
フタヅノカメレオン属の仲間には「フィッシャーカメレオン」や「テヌエドワーフカメレオン」、「ウスメラーカメレオン」などがいますが、そのほとんどがタンザニアやウガンダに生息しているため、今では一部の種類を除いて入荷は見られません。
ベーメカメレオンはカメレオンの中でも小型の種類で、大きさも尻尾を合わせて15〜19cm程しかありません。
オスの方がメスよりも大きく、2本のギザギザした木葉のような形の角を持っています。背中の前半部には小さいトゲ状のクレストを持っており、これが同属の「よく似たカメレオン」と見分けるポイントの1つになっています。
☆角には個性がある!☆
ベーメカメレオンの特徴的な2本の角ですが、似ている形はあっても全く同じ形の角はありません。
木葉のような形だったり、ちょっとギザギザした四角い板のような形だったり、やや上気味に生えている角もあれば、やや下気味に生えている角もあります。角の形も個性なので、その個体だけのかっこよさも堪能しましょう。
2,どんな体色?
ベーメカメレオンはオスとメスで全く違う見た目と体色をしています。
メスは角がなく、体も小さくてほっそりしています。全身が明るい黄緑〜浅黄色をしており、頭部のカスクだけ明るいレンガ色のため帽子を被っているように見えます。
一方オスは基本的に黄緑の体色ですが、そこに白や茶色が入り少し派手な印象です。見るタイミングにもよりますが、色が連なってうっすらと帯状に見えます。
☆カラーバリエーションがある!☆
カラーバリエーション豊かなカメレオンと言えばパンサーカメレオンが主流ですが、ベーメカメレオンにも僅かながらバリエーションがあります。
ちょっと分かりにくいのですが、体色が白の面積が多めの「ホワイト」と黄色みが強い「イエロー」が確認されており、カメレオンに特化しているお店では丁寧に説明してくれたりもします。
3,生息地は?
ベーメカメレオンはアフリカ大陸のケニアにある「テイタ山脈」に生息していると言われています。
「爬虫・両生類パーフェクトガイド カメレオン」によると、普段は標高1200〜2000mという高地に棲んでおり、現地では市街地の近くでも見られる事があるそうです。
この性質から飼育する時は風通しだけでなく、高温にも気を付ける必要があります。
4,ベーメカメレオンの性質は?
ベーメカメレオンはとにかく活発な種類で、カメレオンの中でもなかなか素早いです。
相性の良いペアだったりすると、同じケージで飼育する事もできます。
性格は個体差がありますが、基本的に物怖じしない印象があります。
ブログでもお馴染みのペペ君は、かなり活発で人にもよく慣れています。
また、普段は穏やかな面が目立ちますが、
オス同士だと激しくケンカをしてしまうため注意が必要です。
ベーメカメレオンは本当によく動くカメレオンなので「見ていて楽しい種類」と言われる事もあります。
5,餌は何を与えれば良いの?
基本的にはヨーロッパイエコオロギやフタホシコオロギにカルシウムやビタミンなどのサプリメントをまぶして与えます。
また、飼い主と飼育個体が大丈夫であれば、レッドローチやデュビアなどのゴキブリ系も与えられます。
ミルワームやシルクワーム、ハニーワームは食べるようであれば与えますが、毎日ではなくオヤツ程度、あるいは数ヶ月に1度のごちそうといった形で与えましょう。
与え方は「餌の紹介」の時にもご紹介しています。
ケージ内にバラまく方法、ピンセットで与える方法、ケースに入れて与える方法がありますので、飼育個体とご自分に合った方法を選んでみてください。
よく慣れた個体では人工飼料を食べる事もあります。
Q,コオロギを怖がって食べてくれない…。
A,まずはアプローチを変えてみましょう。
コオロギは主流の餌ですが、カメレオンの中には怖がってしまったり興味を示さない場合があります。
その場合はコオロギの羽や脚を取り除いたり、頭を潰して抵抗できないようにすると食べてくれる事があります。また、中には味やニオイを気にする神経質な個体もおり、上記の方法を試しても食べない場合は餌の種類を変えて与えましょう。
6,ベーメカメレオンに「よく似た種類」とは?
先ほど少し触れましたが、かつてはベーメカメレオンによく似た種類の方が主流でした。
その種類とは「タベタカメレオン」という種類で、「タベタヌムカメレオン」とも呼ばれていた同属のカメレオンです。
タベタカメレオンが主流だった頃、ベーメカメレオンは「ケニアのタベタカメレオン」と呼ばれる事があった程混同されたり、「タベタカメレオンの亜種」とされる事もありました。
しかし、今ではベーメカメレオンは独立種となり、タベタカメレオンの方がベーメカメレオンより大きく(約25cm)、2本の角が先端に近付くほど離れていく事、背中にクレストがない事、メスはカスクがレンガ色に染まらない事などが見分けるポイントとなりました。
生息地もベーメカメレオンと違い、
タンザニアの北部やケニアの南部にある「チュル丘陵火山帯」に分布しています。
とても神経質で臆病な性質をしており、
動きも素早いため飼育難易度は高かったと言われています。
7,飼育で気を付けるべきポイントとは?
ベーメカメレオンは小さいながらもよく動き回り、性質もオス同士でなければトラブルも少ないカメレオンです。
しかし、高山種なので気を付けるべきポイントはしっかり把握しておかないといけないという、ある意味で「メリハリのある種類」と言えます。
ポイント1:高温に注意!
高山種であるベーメカメレオンは、高山特有の涼しい環境に生息しています。
そのため高温の環境は飼育環境としてあまり適していません。
我が家では高くても26℃を越えないようにしており、
基本的にはエアコンを使って日中の気温を24℃くらいで維持できるようにしています。
元気な個体だと一時的であれば27℃以上でも耐えてくれますが、
元々暑さに弱い種類なので気を付けなければいけません。
ポイント2:風通しもしっかり確保!
カメレオン全般に言える事かも知れませんが、ベーメカメレオンの飼育も風通しが大切です。
湿度が高すぎたり湿気がこもってしまうような環境だとカメレオンは簡単に体調を崩してしまいます。
ポイント3:湿度を保つ!
ベーメカメレオンは比較的やや高めの湿度を好む面があるため、
床材にパインチップを使ったり霧吹きをして湿度を保つ必要があります。
湿度が足りないと脱皮不全になりやすく、
特にオスは角の間の古い角質が取れない場合もあるので注意が必要です。
◆湿度を保っていても角の間の古い角質が取れない場合は?◆
角系カメレオンは湿度が足りているはずなのに上手く脱皮ができない事があります。
ベーメカメレオンの場合は上手く脱皮できていると角の間の古い角質もポロッと剥がれてくれますが、上手く剥がれていないと白っぽくボヤけたように見えます。
その場合は古い角質をピンセットを使って優しく取り除いてあげたり、脱皮促進剤などを使うと脱皮不全を改善する事ができます。
また、指先などの場合は温浴して古い角質をふやかして除去するという方法もあります。
ポイント4:隠れ家を用意!
あまり複雑なレイアウトにしない事もカメレオン飼育の大切なポイントではありますが、我が家ではベーメカメレオンの場合は隠れ家を少し多めにレイアウトするようにしています。
これは元々茂みに棲んでいる彼らのための私なりの工夫で、いつでも好きな時に隠れられるようにするためです。
難しい事はほとんどなく、100均の人工植物や小鳥用の止まり木、「ジャングルバイン」などの針金入り人工ツタを使ってレイアウトします。
ポイント5:光の当たらない場所を作る事!
前述した隠れ家の話にも共通する部分がありますが、ベーメカメレオンはさほど明るい環境は好んでいないように思えます。
確かに体を暖めたり紫外線吸収のためにライトの下に行く事はありますが、それが終わるとわりと暗い場所に移動して過ごしています。
これは自然下では日陰の多い茂みの中に生息している事が理由のようです。
8,ベーメカメレオンの繁殖について
ベーメカメレオンの繁殖は国内で聞かれるようになりましたが、まだまだ少ないと言えます。
その理由はカメレオンの中でも比較的産卵数が少ない事や入荷がまちまちな事なども含まれていると思います。
・相性の良いペアを迎えよう
ベーメカメレオンの入荷は頻繁ではなく、オスメスの片方だけが入荷する事もよくあります。
ですが、カメレオンに特化したお店や運が良いとペアで迎え入れる事ができます。
そして、この時注意したいのが「相性」です。
相性が悪いと交尾を拒否されたりして繁殖計画自体が頓挫する事になってしまいます。
お店で見かけたらオスメスの様子をよく見て迎え入れましょう。
☆飼い主ビックリ! すでにカップル成立してた!☆
私が飼育しているペペ君は、
お店にいた時はオス×2、メス×1で飼育されていました。
その時はメス(後のベーゼちゃん)は確定していたのですが、2匹いるオスのどちらにするか、かなり悩んだものです。
しばらく観察していると、決断の瞬間は突然やって来ました。
何と1匹のオスがメスを守るように、もう1匹のオスの前に立ち塞がって威嚇したのです。メスは勇敢なオスの傍から離れようとしなかったため、すでにペアが成立しているとしてこのオスを迎え入れました。
それが今のペペ君です。
ペペ君はいつもベーゼちゃん優先で餌もベーゼちゃんが食べてから食べる、ツタの先で鉢合わせたら道を譲るなど、かなり紳士的な行動を取っていました。
◆相性が悪いと大変!◆
一方で相性が悪かったのがマカロニちゃんでした。
臆病なマカロニちゃんはペペ君がちょっとでも見えると体色が真っ黒になり、逃げ回りました。
ペペ君もベーゼちゃんに一途なのか、それとも気に入らなかったのか、マカロニちゃんが見えると向こうが体色を変えるより早く威嚇の体色を示し、口を大きく開けて怒っていました。
・たっぷり餌を与えよう!
相性の良いペアはすぐに交尾に移ります。
場合によってはお店で交尾済みの事もあり、すでに妊娠している事もあります。
妊娠中のメスはかなりたくさんの餌を欲しがるようになるので、しっかり食欲を満たしてあげましょう。
・食欲が落ちたor餌を食べなくなったら産卵間近の合図!
ベーメカメレオンの妊娠期間は約1ヶ月〜1ヶ月半ですが、その間はかなりたくさんの餌を食べます。
これは産卵間近の合図で、この頃になるとケージの下部に降りてくる頻度が増えたり、鳥カゴ飼育の場合はカゴの隙間から脱走しようとする行動が見られるようになります。
ベーメカメレオンは餌を食べなくなったり食欲が落ちてから数日で産卵します。
その時、体色を真っ黒に染める事があります。
Q,お腹の卵が知りたい場合は?
A,触診や観察で卵を確認する方法があります。
エボシカメレオンやパンサーカメレオンのように多産な種類であれば、見ただけで妊娠しているのが分かりますが、ベーメカメレオンは卵生カメレオンの中でも産卵数が少なめで、卵が少ないとパッと見分からない事があります。
その場合はお腹を両側から指先で優しく触ります。
すると卵があれば、コロッとした固さのある物が指先に当たるので分かりやすいです。
しかし、相手はカメレオンの妊婦さん。
触診は当然嫌がりますし、中にはストレスになって産卵時期を逃してしまう事もあります。
そのため触診はある程度触られ慣れている個体にした方が無難です。
他にも観察時間がたくさん取れる方の場合は、妊婦カメレオンの動きをよく観察してみましょう。卵を持っていると、後ろ脚の付け根辺りに卵の輪郭が見える事があります。
・産卵床を用意しよう!
卵生カメレオンであるベーメカメレオンは、基本的に地面に穴を掘ってその中で産卵します。
産卵床はそのために必要な物です。
産卵床には水と園芸用の黒土や赤土を混ぜた物や、さらに水ゴケを混ぜた物を使う方もいます。
我が家では、ジクラ様が販売している「湿潤系のサンド」に「熟成バークチップ」の細かい物と水を混ぜて産卵床を作っています。固さは掘っても穴が崩れないくらいの固さを目指します。
これを大きめのプラケースに深さ15cm程敷き詰めて使っていました。ベーゼちゃんは産卵床に移すとすぐに穴を掘り初め、底まで掘り進めると体を反転させて産卵を始めました。
■産卵中は静かに!■
カメレオンの産卵は苦しげな声を上げる訳ではありませんが、妊婦さんは力みながら必死に産卵をしています。
産卵中に騒いだり急な動きをすると不安になったりして産卵を中止してしまう事もあります。
人間でも、出産中に騒がしく応援したり茶々いれするような人は「非常識」と捉えられます。カメレオンの出産、産卵も変わりませんので母体と子供、卵達の無事を静かに願いましょう。
☆産卵後の母の愛☆
卵生カメレオンは産卵後、ワニやヘビのように卵を守る行動は取りません。
しかし、産んだ我が子が天敵や外敵に見つからないように、穴を埋めた後はカモフラージュのために回りの地面をかきむしったり枯れ葉を被せる事もあります。
・産卵後は卵を堀出そう!
そのまま卵を育てても良いのですが、カビの予防や湿度管理のために産卵床から卵を優しさ掘り出し、プラケースや孵卵器に移します。
この時注意したいのが「卵の上下を変えてしまう事」です。
爬虫類の卵は鳥類と違って上下が変わると卵の中の「胚(赤ちゃんになる部分)」の成長が止まってしまったり、卵黄の重さに耐えられず中の幼体が死んでしまう事もあります。
☆爬虫類の繁殖に欠かせないのは「文房具」!?☆
成長の記録を取る事も大切ですが、
カメレオンやヘビなどの爬虫類を繁殖させる上で「ペン」はとても大切です。
水性でも油性でも良いですが、
簡単に印をつけやすい油性ペンが個人的にはオススメです。
(ホワイトボードで使われる「マッキー」はシンナーが含まれるので避けます。)
・湿度、温度を保ちながら孵化の時を待とう!
カメレオンの卵は孵化まで長い期間待つ必要があります。
ベーメカメレオンも約150日、4〜5ヶ月待つ必要があるのです。
我が家では23〜25℃を保ち、1月の半ばに産まれた卵は6月上旬に孵化が始まりました。
孵卵温度はもう少し高い26〜27℃くらいでも良く、そちらの方が孵化も早いそうです。
☆カビ対策にはコレ!☆
孵化に長い期間を要するカメレオンの卵のお世話の中でも気になるのが「カビ対策」です。
卵を管理している床材の交換でもある程度カビを防ぐ事ができますが、それでも不安な方には設置型消臭剤「イオレイズ」がオススメです。
イオレイズは置くだけで抗菌、抗ウイルス、防カビ効果があり、プロのブリーダーも使う程の逸品です。
・待ちに待った孵化!
長い孵卵期間を経て、卵から赤ちゃん達が顔を覗かせます。
基本的にはすぐ卵から出てくる事はありませんが、元気いっぱいな赤ちゃんだと数時間で卵から出て来て歩き回ります。
・赤ちゃんに餌をあげよう!
赤ちゃん達はすぐに餌を食べず、生まれてから約2日後くらいから餌を食べ初めます。
赤ちゃんはとても小さいので、餌にはトビムシやコオロギのピンヘッドという生まれたての小さな虫を与えます。
9,ベーメカメレオンの豆情報★
・実は飼い主の事をよく見てます
ベーメカメレオンはとても好奇心旺盛な個体が多く、最初は逃げ回ったり隠れ回っていても、こちらが気付いた頃には逆にケージの中から観察している事もあります。
ご飯の時や家を出る時も見ている事があり、近くに時計があるとそれも覚えてしまうようです。
ペペ君は私が仕事着を着たり、カバンやエコバックを出すと「行かせない」と言わんばかりに駆け寄ってきて「出せ出せ攻撃」をする事があります。
・貴方の帰りを待ってるよ!
個人的にカメレオンは「ツンデレ」「クーデレ」という印象がありますが、ベーメカメレオンは結構「デレ」が強めな気がします。
特に帰宅時は足音や影の動きで分かるのか、ケージの出入口でスタンバっていたりします。そして「早く出して〜」と鼻先や手を出して来ます。
・冒険しよう!
ベーメカメレオンはとても活発です。
時間がある日は危険物や脱走の対策をしてから「部屋んぽ」させるのも楽しいです。
・注目してね!
これはペペ君だけかも知れませんが、ハンドリング中にちょっとでも目を離すと体を扁平にして派手な体色になって目を惹こうとする事があります。
・音は聞こえないはず…
カメレオンは視覚がかなり発達した代わりに聴覚が退化しており、音がほとんど聞こえないと言われています。
しかし、よく慣れているベーメカメレオンは、
名前を呼ぶと寄ってきたり、多少の単語を聞き取っているような素振りを見せます。
・頑張れば「待て」もできる!?
愛犬家の方がよく愛犬に覚えさせる「待て」ですが、
「カメレオンもできるかも知れない」という希望を私はペペ君から見出だしています。
というのも私の身振り手振りをよく観察しているペペ君は、止まり木に乗せて、手の平を見せてから「待て」と言うとその場から動かずジッと待っていたりします。
我が家ではコーヒーやお茶を作る時に「待て」をしています。
待ってくれたご褒美に高めの声で「偉い!」「ペペ君天才!」と言いながらカスクや背中を撫でると指にしがみついて離れなくなります。
また、部屋でかくれんぼした時に見つからない時は慌てず「ペペ君!どこかな?」「こっちおいで〜」と言うと出てきます。
まとめ
今回は、このブログと動画の主役である高山種・小型カメレオンである「ベーメカメレオン」についてご紹介させていただきました。
エボシカメレオンやパンサーカメレオンと比べると、まだまだマイナーな種類ですが、高山種の中では比較的飼育しやすい種類であり、入荷も以前より増えているように思えます。
小さな体で毎日活発に冒険し、餌を食べ、オスの2本の角やメスのレンガ色の防止はパンサーカメレオンやエボシカメレオンにはない、ベーメカメレオン特有の可愛らしさです。
また、良く慣れた個体は、朝の目覚めや仕事や学校帰りの時間になると貴方が来るのを今か今かと待ち、様々な行動で自分の事をアピールしてくれます。
中にはペペ君のように指の上で寝てしまう子もいます。