多くのカメレオンの故郷でもあるマダガスカルでは、カーペットカメレオンやパンサーカメレオン、ヒメカメレオンなどがそれぞれの環境に合わせて擬態しながら暮らしています。
そんな中、カメレオンにも負けない擬態能力を持つ動物がいます。それが今回皆様にご紹介させていただく「ヘラオヤモリの仲間達」です。
1,カメレオンに負けない擬態名人!ヘラオヤモリとはどんな生き物?
①生息地について
ヘラオヤモリの仲間達は全てがマダガスカル固有種となっており、ワシントン条約付属書Ⅱ類に掲載されている珍しいヤモリです。
その多くは湿度の高い森林やジャングルに生息していますが、一部の種類は竹林や乾燥地帯に近い森林などに生息しています。
②どんな見た目をしているの?
彼らはどの種類も自然に溶け込む事に特化しており、木の幹の樹皮に擬態する者もいれば、枝の葉っぱに擬態している者もいます。
そんな自然界に溶け込んで生きているヘラオヤモリの仲間達は、体色に派手さはなく、樹皮や枯れ葉にそっくりな茶色や緑灰色、白、茶褐色などをしていますが、お腹側は白い種類もいます。
また、樹皮に擬態する種類は、擬態能力をより高めるために、体側にヒラヒラとした皮弁があり、これを密着させて自分の輪郭すらぼかす事ができます。
体型としてはスマートな種類が多く、脚は長く、頭は大きいですが喉が細いというのが特徴です。
③大きさはどのくらい?
ヘラオヤモリの種類にもよりますが、最小種の「エベノーヘラオヤモリ」で約8cm、最大種の「フリンジヘラオヤモリ」「テイオウヘラオヤモリ」で約33cmほどの大きさになります。
④気になる性質は?
ヤモリの仲間らしく、同種や同じくらいの大きさのヘラオヤモリの仲間とであれば仲良く一緒にいる事も多い種類です。
⑤どんな物を食べているの?
彼らは夜、主にガやイモムシ、バッタなどの昆虫を捕食しています。
⑥どこでお迎えできるの?
ヘラオヤモリ達は、爬虫類専門店や爬虫類にも相当力を入れている総合ペットショップなどで販売されています。
しかし、マダガスカル便は時期的なものがあるため常にお目にかかれる種類ではありません。
もしお迎えしたいのであれば、晩秋〜冬の時期まで辛抱強く待ち、入荷情報を見てからお店に行くのが確実です。
2,ヘラオヤモリの仲間達について
樹皮や葉っぱに擬態するヘラオヤモリ達は、その見た目や珍しさから人気が高い種類となっており、マダガスカル便の時期になると数種類が日本に輸入されてきます。
①エベノーヘラオヤモリ
ヘラオヤモリの最小種で、大きさは7〜8cmほどしかありません。尻尾は短く、平たいダイヤ、あるいは枝の切れ端のような形をしています。
②エダハヘラオヤモリ
大きさは8〜9cmほどで、エベノーヘラオヤモリより少し大きい種類ですが、その見た目はかなり異なります。
枯れ葉や木葉に擬態している種類とあって、体色は茶褐色や枯れ葉色をしていますが、体表の所々には虫食い跡やコケを思わせる緑や黒の模様が入ります。
③ヤマビタイヘラオヤモリ
額部分が若干盛り上がっている事が名前の由来とされている種類で、大きさは17〜18cmほどです。
体側やアゴ下には皮弁があり、これを木の幹や枝の樹皮に密着させて樹皮になりきります。
体色は樹皮を思わせる灰色や淡い茶色などに褐色の樹皮模様が入る徹底ぶりです。
④スベヒタイヘラオヤモリ
ヘラオヤモリの中でもマダガスカル北部の荒れ地に生息しているため、他の種類より乾燥に強いという特徴があります。大きさは約25cmほどです。
虹彩は黄色か薄いピンク色、体色は細かな編み目のような樹皮模様に褐色や赤褐色です。
⑤スジヘラオヤモリ
ヘラオヤモリの中でも珍しく、竹林に生息している種類です。大きさは約25cmほどです。
体側にヒラヒラとした皮弁を持たず、体色はベージュやクリーム色に細かな淡い褐色のラインが入ります。
青々とした竹というよりは枯れた竹などに擬態しているようで、体型も同じ大きさのスベヒタイヘラオヤモリよりスマートです。
⑥フリンジヘラオヤモリ
ヘラオヤモリの最大種の1つで、大きさは28〜33cmにもなります。
体が大きい分、手足の長さや頭部の大きさが際立ちます。虹彩は赤に白のネット模様、体色は樹皮に生えたコケを思わせる緑灰色に白や暗緑色の細かな模様が入ります。
3,ヘラオヤモリの飼育方法について
特徴的な見た目から人気が高いヘラオヤモリ達ですが、飼育難易度はヤモリの仲間の中でも高い種類であり、長期飼育が難しいと言われています。
①ケージ
ヘラオヤモリの種類に合わせてサイズを変える必要があり、湿度を保つためにガラス製の爬虫類専用ケージやショップのオリジナルケージを使います。
②床材
ヘラオヤモリの飼育には「低温・高湿度」という環境を作らなければならないため、飼育に使う床材は湿度を維持しやすい性質があるヤシガラや湿潤タイプの土を厚めに敷き詰めます。
③保温・保湿
彼らは湿度の高い環境を好んではいますが、決して「蒸れている状態」が好きな訳ではありません。
そのため、保温する際はケージの側面にパネルヒーターを貼ったり、暖突を使って暖めるようにします。この時、ケージ内の温度が28℃にならないように注意しましょう。25℃超えてくると、ヘラオヤモリは暑さに弱いため弱ってしまいます。
④給水
ヘラオヤモリ達は、なかなか水容器から水を飲んでくれません。そのまま放っておいてしまうと、脱水状態になって死んでしまう事があります。
これを防ぐために、1日数回の霧吹きをしたり、モンスーンなどを使って擬似的な雨を降らせ、水を飲ませるようにします。
また、カメレオンの飼育に使うドリップボトルもヘラオヤモリの飼育に使う事ができるのでオススメです。
⑤餌
意外とつまずいてしまいやすいのが餌として与える虫の大きさです。
ヘラオヤモリ達は頭は大きいのですが、カメレオンのように広がるデュラップがないため、大きな虫を飲み込むのは難しくなっています。
これに気付かずに頭のサイズだけで餌を与えてしまうと食べなかったり喉に詰まらせてしまい、短命が終わらせてしまうのです。
⑥隠れ家(シェルター)
ヘラオヤモリの場合は環境に溶け込もうとするため、ヤマビタイヘラオヤモリやフリンジヘラオヤモリのように樹皮に擬態する種類であればコルクボードやコルク樹皮を使い、
エベノーヘラオヤモリやエダハヘラオヤモリのように枯れ葉や木葉に擬態する種類は枯れ葉付きの枝や枝流木などを使ってレイアウトするようにして、安心して擬態できるような環境を整えてあげましょう。
⑦掃除
低温・多湿という環境はフンや食べ残しがカビやすいため、フンやカビを発見したらピンセットなどでなるべく取り除くようにしましょう。
4,ヘラオヤモリの繁殖について
マダガスカル便という時期が決まっている時に入るか入らないかというレアヤモリな彼らですが、最近では熱心な愛好家の方々によって国内繁殖されている事があります。
そういった個体は稀にショップや即売会イベントなどで見る事ができます。
ヘラオヤモリはヤモリの仲間なので卵は1度の産卵につき2個しか産みません。
その卵を大切に孵卵し、孵った幼体も安心サイズまで育てたのは流石は熟練者です。
何故ならヘラオヤモリの飼育難易度が高いだけでなく、ペアも揃えづらいため、そもそも繁殖に辿り着ける事自体がかなり難しいからです。
まとめ
今回は、カメレオンにも負けない擬態名人・ヘラオヤモリ達について皆様にご紹介させていただきました。
ヘラオヤモリはその自然系悪魔チックな見た目が不思議な魅力を醸し出す神秘のヤモリとも言えます。
また、飼育難易度は以前高いものの、最近ではショップで長期飼育されて比較的安心して飼育しやすい個体がいたり、飼育器具や飼育方法の進歩によって少しずつヘラオヤモリの長期飼育が実現しつつあります。