バシリスクカメレオンについて徹底解説!
最近はチチュウカイカメレオンやペッターカメレオンなどの珍しい種類が電撃入荷したりイベントでお披露目されたりと賑やかになってきた爬虫類界隈。
その中でもYouTuberの動画で見られやすいのがカメレオン界のニューカマー「バシリスクカメレオン」です。
バシリスクカメレオンは日本に入荷されてきたのは比較的最近で、その美しさと性格からジンワリとカメレオンファンだけでなく爬虫類ファンの心を鷲掴みしているカメレオンとなります。
1,バジリスクカメレオンとは何者なのか!?
①分類は何カメレオン?
バジリスクカメレオンは分類上、「エボシカメレオン」や「セネガルカメレオン」などが含まれるグループ「ナミカメレオン属」に分類されています。
②気になる見た目は?
バシリスクカメレオンの見た目はナミカメレオン属の中でも「エボシカメレオン」に近い見た目をしています。
しかし、エボシカメレオンよりずっと小さく、その大きさは35〜40cmほどしかありません。
これはエボシカメレオンのメスとあまり変わらない大きさです。
また、チチュウカイカメレオンには見られていたフラップは無く、カスクはエボシカメレオンほど高くはなりませんが、ナミカメレオン属の中では高い部類に入り、先端が尖っているのが特徴です。
★コラム★「僕達!多彩なれば!!」
バシリスクカメレオンは入荷されるようになってから日が浅いとはいえ、かなり注目を集めている種類でもあります。
何故かというと、バシリスクカメレオンはカメレオン全体の中でも非常に美しい体色を持っているからです。
普段の落ち着いている時の体色ですら鮮やかな緑にうっすらとエメラルドグリーンのバンド模様、さらには黄色のラインが途切れ途切れに入るというシンプルな美しさを放っています。
そして、興奮すると体色はエメラルドグリーンに輝き、バンド模様との色彩の違いがハッキリしてより美しくなるのです。中には濃い緑色のドット模様が浮き上がる事があります。
また、「ディスカバリー カメレオン大図鑑」によると、気分だけでなく時間帯でも体色をコロコロ変えるようなので見ていて楽しい種類とも言えます。
③生息地は?
バシリスクカメレオンはアフリカ大陸を中心にヨーロッパの一部などに広く生息している種類とされており、エジプトやカメルーン、マリ、ナイジェリア、スーダンなどのアフリカの国々の他、ギリシャでも生息が確認されています。
生息地の環境としては、ベーメカメレオンやジャクソンカメレオンのような高山ではなく、太陽の日差しをかなり受けやすい低地の樹林や薮のようなところで生息が確認されております。
さらに、その地域は年間を通して季節変化がなく、日中は気温が高く、夜間は気温が一気に下がるという温度の変化が激しい土地柄です。
④気になる性格は?
カメレオンに限らず、迎え入れるのであれば気にせずにはいられない性格についてですが、バシリスクカメレオンはカメレオンの仲間の中でも割りと陽気な性格であり、テリトリー意識も低く協調性のある種類です。
⑤バシリスクカメレオンの別名や名前の由来は?
バシリスクカメレオンの学名は「Chamaeleo africanus」であり、別名は「アフリカンカメレオン」や「アフリカカメレオン」と呼ばれ、この名前で流通する事もあります。
◆名前の元ネタ「バシリスク(バジリスク)」の伝説について
ここからはちょっとした豆知識、爬虫類の呼び名に使われる事の多い怪物「バシリスク」についてご紹介させていただきます。
この怪物はファンタジー小説「ハリーポッターシリーズ」やゲームにも登場するため、比較的有名な怪物です。
その伝説で語られる姿は、爬虫類としては扱いやすい50cm〜1mほどの大きさの超猛毒の蛇、あるいは鳥のような手足や翼を持つドラゴンの姿が描かれています。
一応前者の方が古くから語られる姿であり、後者が中世から語られるようになった姿です。
描かれる姿に大きな差がありますが、一貫して共通しているのは「超猛毒」「一睨みしただけで相手を殺す(あるいは石に変える)」能力と、頭部に王冠のような鱗や突起物がある事です。
小柄な体でありながら強力な能力を持ち、その頭に王冠をいただき、堂々と佇む姿から「小さな王」ないし「蛇の王」という意味を持つ「バシリスク」の名が怪物の呼称になったと言われています。
バシリスクの能力は凄まじく、「騎兵が槍で突いたらその毒が槍を伝い、騎士を乗っていた馬ごと殺してしまった」「とある城に攻め行った際、エントランスの天井に置かれたバシリスクの視線によって多くの兵士が帰らぬ人となった」などの伝説があります。
後者の伝説ではバシリスクに対抗するため「大きな鏡(または鏡のように磨いた大盾)を天井に向けて突入する」という奇策を用い、見事バジリスクを退治しています。
このように、本来のバシリスクは大変危険極まりない怪物ではありますが、その見た目に似ている爬虫類達が流通名にその堂々たる名前をいただいているのです。
⑥何を食べているの?
バシリスクカメレオンはまだまだ飼育情報が少ない珍しいカメレオンですが、そこはカメレオンらしく、バッタやイモムシなどの昆虫を捕食しています。
2,バシリスクカメレオンの飼育設備や環境について
派手で美しい体色に大きすぎず、小さすぎないというサイズ感、陽気な性格から初心者にも扱いやすいであろうバシリスクカメレオンは、知れば知るほど魅力に溢れた種類であり、できる事ならお迎えしたいと思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
①ケージについて
バシリスクカメレオンの飼育にはハウスとなる「ケージ」が必要です。
このケージの広さは幅60cm、奥行き45cm、高さ60cmもあれば終生飼育でき、成体であっても2〜3匹飼育できるようです。樹上種専用のケージや鳥かご、メッシュケージも個人的にはオススメです。
また、ケージをさらに広くして観葉植物やたくさんの流木や止まり木をレイアウトする事で、より多頭飼育がしやすくなります。
いくらカメレオンの中でも陽気な性格とはいえ、カメレオンの仲間である事には変わりないのでケージの設置場所は床ではなく、できれば目線より上の高さにすると余計なストレスを与えにくいと思います。
ただし、お迎えして間もないのに人目も気にせず堂々と馴染んでしまっている場合は、隠れ家があれば目線の高さでもあまり問題はなさそうです。
②止まり木について
カメレオンにとって木の枝は大切な道であり憩いの場です。鳥かご飼育の場合だと金網を掴んで移動できますが、それでも道や場所は足りません。
様々な太さの枝や流木を入れてあげると立体行動にも幅ができますし、カメレオンのお気に入りの場所ができたり飼い主側からしてもホットスポットの位置を作りやすくなります。
★コラム★カメレオンの手に合う枝を探してみよう
自然界では太い枝、細いツタなどを移動しているカメレオンですので、様々な太さのある枝を配置すると意外と活用してくれます。
そんなカメレオンにも「掴みやすい枝」があり、その枝の太さですが、飼育しているカメレオンが「枝を握った時に少し隙間ができるくらいの太さ」なのだそうです。
③給水器について
カメレオン飼育の肝と言えるのが「給水」です。
ドリップボトルや水が動くタイプの給水器、または水容器にエアレーションをして水を動かした物をケージに必ず設置します。
また、給水器から水を飲んでも飲まなくても、スポイトなどでポタポタと水を溢して反応を見る事も大切です。
④ライト、ホットスポットについて
全ての種類が昼行性のカメレオンにとって紫外線はなくてはならない物です。また、体温を上げるためのホットスポットも大切です。
ケージにライトを設置しますが、ライトは角度や距離、使っているケージによってはカメレオンが掴んでしまったり、眩しすぎて目を痛めてしまう事もあるため注意が必要です。
ホットスポットは直下が約35〜38℃くらいになるように設定し、他のエリアは周辺温度を約28℃、夜間は20℃くらいになるようにして環境を再現してあげましょう。
★コラム★たまには日光浴をさせてみよう
紫外線ライトを使っていれば毎日が日光浴という感じもしますが、天気も良く、暖かい日に日光浴をするのもカメレオンにとって良い事です。
脱走防止のために網戸越しにするか、鳥かごのようなケージに入れて日光浴を行いますが、この時も目を離さないようにします。
というのも、カメレオンはある程度紫外線を吸収すると体色を明るくしてどこかへ移動したり日陰に隠れたりします。
⑤湿度について
バシリスクカメレオンは比較的乾燥にも高温にも強い種類である事が分かっています。
湿度配分についてですが、日中に約55%、日没後約80%、夜間約65%、早朝約80%あると調子が良いようです。
湿度や温度が分かりにくい場合は「温度計、湿度計」を設置して目視できるようにしておけば、すぐに環境改善しやすくなるのでオススメです。
湿度を保つための方法として、加湿器を使ったりレインシステムを導入してケージ内に定期的な降雨を再現したり、霧吹きを使うなどがありますが、他にもレイアウトに観葉植物を使う方法もあります。
給水器も湿度を保つ働きがあり、ドリップボトルのタイプであれば、滴る水を観葉植物で受ける事で水まき+湿度保持の効果が期待できます。
★コラム★湿度だけじゃなく通気性も大事
カメレオン飼育には確かに湿度も大切ですが、通気性も大切になります。
通気性がなく湿度が籠ったような環境ではカメレオンが短命に終わってしまう事が多々あるため、ケージには通気性を確保した物を使ったり、空気の流れを作るために扇風機やサーキュレーターを使うのもオススメです。
⑥給餌について
バシリスクカメレオンは野生下でも昆虫類を捕食しているため、飼育下でも主な餌は昆虫類となります。
ショップで入手しやすい餌としてヨーロッパイエコオロギやフタホシコオロギ、レッドローチ、デュビア、ハニーワーム、シルクワーム(蚕の幼虫)があります。
主食はコオロギ、ゴキブリ系でオヤツにハニーワームやシルクワームを与えるのが一般的です。
餌となる昆虫には餌を与えて栄養をつけさせ、カメレオンに与える際にはカルシウムパウダーなどのサプリメントをまぶしてから与えるようにして栄養不足にならないように注意しましょう。
★コラム★野菜類は食べるのか…?
ナミカメレオン属のエボシカメレオンといえば、野菜や果物も好んで食べますし、他のカメレオンの何種類かはレタスやイチゴを差し出すと食べてくれる事があるようです。
バシリスクカメレオンは生息地もエボシカメレオンと被っていたり、環境も乾燥していたりするため植物質の餌も食べてくれそうな気がしますが、そこはまだまだ謎が深いため何とも言えません。
⑦部屋んぽについて
バシリスクカメレオンは程よい大きさがあるので、飼育環境や人に慣れてきたら運動不足解消も兼ねて「部屋んぽ」させてあげるのも良いと思います。
可能であれば、物干し竿に麻のロープを巻いた物や枝を配置して遊べる場所を作ってあげましょう。
この時もあまり目は離さないようにする必要があり、脱走やケガをさせないように注意します。
3,バシリスクカメレオンの繁殖について
流通して間もないバシリスクカメレオンですが、状態の良いペアがいれば繁殖させられる事が分かっています。
①バシリスクカメレオンの雌雄判別について
バシリスクカメレオンの雌雄判別はとても簡単です。
何故ならオスのかかとに当たるところに「足根距」という突起物があるからです。
②繁殖形態は?
バシリスクカメレオンの繁殖形態は卵生である事が分かっており、産卵間近になるとケージの下辺りでウロウロしたり、植木鉢の土を掘ったりするようになります。
③卵の数は?
バシリスクカメレオンの国内繁殖個体は現段階ではまだ出回っていませんが、1度の産卵で平均40〜50個もの卵を産むというデータがあります。
◆産卵は死と隣り合わせ!
カメレオンに限らずどんな生き物でも産卵、出産は命懸けです。中には産気づいたものの、出産できずに亡くなってしまう事だってあるのです。
卵生カメレオンにもそれは見られ、水分が足りなかったり十分な体力がないと産卵中に死んでしまう事も少なくありません。
卵生カメレオンの卵は体内の限界まで作られるため、産卵間近のお母さんカメレオンの体内には胃袋や肺、気管が圧迫されてしまうほどの量の卵が詰まっています。
よくカメレオンが産卵、出産間近になるとほとんど餌を食べなくなり、水しか飲まなくなると言われているのはこれが原因なのでしょう。
しかもその状態で穴を掘って産卵するのですから、お母さんカメレオンにかかる負担は計り知れません。
④産卵した後のお世話は?
産卵が終わったら、まずはお母さんカメレオンを労ってあげてください。産卵はかなり体力を使いますので見た目以上に弱っている事が多いです。
栄養たっぷりのハニーワームや消化しやすいように羽や足を取ったコオロギを与えて栄養をつけさせます。
産まれた卵は優しく掘り起こして産卵床を敷いたプラケースなどに移動します。
産まれたばかりでまだ発生が始まっていない状態なら多少転がっても大丈夫らしいのですが、筆者は不安なので、あまり卵の上下を変えないように移動させます。
この時余裕があれば卵にペンで印を付けておくと上下が分かりやすくなるのでオススメです。
卵の産卵床ですが、「バーミキュライト」がよく使われています。また、「ハッチライト」という産卵床も爬虫類専門店に行けば取り扱っている事があるので、是非お好きな方をお使いください。
⑤バシリスクカメレオンを繁殖中の方について
まだまだ繁殖データが少ないバシリスクカメレオンですが、YouTuberではそんなバシリスクカメレオンの繁殖に挑戦している方がいます。
その方は「ふじぴこ」様という方で、普段はお笑い芸人をされているそうです。
カメレオンを初めとした多くの爬虫類達を大切に飼育しておられる方で、日光浴はもちろん、彼らのためのレイアウトにも拘っています。
また、爬虫類イベントにも参加している時があり、カメレオン専門店のお手伝いをしている事も包み隠さず動画で公開しています。
そんなふじぴこ様はバシリスクカメレオンをペアで飼育しており、何と産卵まで漕ぎ着く事ができたのです。
その卵の管理のために孵卵用の機械を導入するなど、カメレオンに対する並々ならぬ愛情と情熱を感じます。
まとめ
今回はカメレオン界のニューカマー・バシリスクカメレオンについて皆様にご紹介させていただきました。
このバシリスクカメレオンは飼育繁殖のデータが少ない種類ですが、カメレオンの仲間の中でも体色が美しく、性格も陽気とかなり魅力的な種類です。
入荷してくる頭数は少ないですが、実は、前回ご紹介したチチュウカイカメレオンと同じくらい筆者が迎え入れたい種類だったりします。
繁殖は考えてないのでオスでもメスでも大歓迎ですが、もし迎え入れる事ができたらブログでより詳しくご紹介できたらと思います。
参考資料:ディスカバリー カメレオン大図鑑