ペットとして徐々に人気が高まっている爬虫類業界の中でも鮮やかな体色と不思議な見た目、気分や状態が分かりやすいカメレオンの仲間達は度々注目を集めています。
中にはタイガーカメレオンやナマクアカメレオンのように非常に珍しい種類やバシリクスカメレオンのように体色が美しい種類の電撃入荷もあるため、とにかく目が離せません。
そんな中、生息地となっているお国の事情で入荷が止まり、姿を見られなくなってしまった種類がいくつかいます。
今回はその中でも立派な2本角を持つカメレオン「フィッシャーカメレオン」について皆様にご紹介させていただきます。
フィッシャーカメレオンは10年ほど前は入荷があり、そのカッコ良さから人気があったカメレオンです。
1,幻のフタヅノカメレオン!「フィッシャーカメレオン」の特徴について!
画像出典元:爬虫類ショップWildMonster 様
①分類は?
フィッシャーカメレオンの学名は「Kinyongia fischeri」で、ペペ君でお馴染み「ベーメカメレオン」と同じ「フタヅノカメレオン属」に分類されています。
頭部には立派な角が2本生えており、体の大きさもあってかなりカッコ良い見た目をしています。
②生息地は?
アフリカ産カメレオンの一種である彼らは、タンザニアの「ングル山」という山地の標高約1500mあたりの森林や茂みなどに生息しているとされています。
⭐種類によって生息地が違う!
種類は後ほどご紹介いたしますが、フィッシャーカメレオンには6亜種もおり、その仲間達はそれぞれ微妙に生息地が違います。
③大体の大きさは?
フィッシャーカメレオンの大きさは大体25〜35cmほどで、フタヅノカメレオン属の中でもかなり大きいです。
ベーメカメレオンのペペ君が2匹並んでギリギリ同じくらいの大きさと言えます。
④どんな見た目をしているの?
見た目はペペ君の巨大化バージョンに近いですが、所々ちがいが見られます。
まず、頭部のカスクは後方にいくにつれて高くなり、首の後ろまで発達します。メスはそこまで発達せず、比較的なだらかで丸みがある感じです。
オスの鼻先には板状かつギザギザした2本の角を持ち、これを使って縄張り争いをします。
喉に目立ったクレストはありませんが、背中にはトゲ状の細かなクレストが体の約1/3ほど続きます。
体が大きい分尻尾も太く長いですが、メスの尻尾はオスのような太さは無く、比較的ほっそりしています。
⑤気になる性格は?
まだ幼体の時は同じケージで多頭飼育ができるようですが、成体になるとオス同士では激しく争うようになります。
また、メスと一緒やメス同士であれば同じケージでも飼育できるほど協調性は高いとされています。
しかし、体が大きい事と大型種の中では活発に動き回る性格のため同じケージで多頭飼育するよりは、それぞれに飼育ケージを用意して単独での飼育が推奨されています。
運動量も多く、枝の上でジッとしている事もありますが、一度動き出すとケージ内を歩き回ったりハンドリングや移動の時にジャンプをしたという話もあり、その活発さが良く分かります。
⭐何となく分かる活発さ!
フィッシャーカメレオンと同じ「フタヅノカメレオン属」に分類されているベーメカメレオンのペペ君を見ていると、この仲間の活発な性格が良く分かります。
隠れ家は確かに必要なのですが、頻繁にケージ内を動き回ったり、部屋んぽをさせればカーテンや人工ツタを登り、飼い主の頭の上までダッシュしたりするため、爬虫類の中でものんびりした動きが多いカメレオンの仲間とは思えないほど動きが活発です。
これを大型種であるフィッシャーカメレオンがやるのですから、確かに協調性が悪くなくても同じケージで多頭飼育するよりは個別飼育した方が推奨される理由も分かる気がします。
また、余談ですが、筆者は10数年前に爬虫類専門店を訪れた際に室内の上部に設置されたカクタス・スケルトンや太い枝の上をトコトコと歩き回るフィッシャーカメレオンを見た事があります。
一緒にパーソンカメレオンやインドシナウォータードラゴンもいましたが、そちらは木の上でのんびりしていたのに対してフィッシャーカメレオンは彼らにイタズラはしなくても常に動き回っていたのを覚えています。
⑥何を食べているの?
他のカメレオン達と同じように肉食性の種類です。
主にバッタやイモムシ、チョウなどの昆虫の他、コガネムシやカミキリムシのような外殻が前者より硬い虫も捕食対象にしています。
2,フィッシャーカメレオンの仲間達について
フタヅノカメレオンの仲間の中でも最大級の大きさと角を持つフィッシャーカメレオンには6亜種もおり、その一部はかつて日本に入荷してきた事もあります。
①オオフタヅノカメレオン
属内最大クラスの大きさと角から「ジャイアントフィッシャーカメレオン」と呼ばれる大型種です。
その大きさは35〜40cmほどですが、中には40cmを超える大きさの個体もいたそうです。
そうなると、パンサーカメレオンより少し大きいという事になります。
特徴的な角はフィッシャーカメレオンより大きいだけでなく、さらにギザギザして攻撃的な形状をしており、見る者を圧倒します。
また、短いながらメスにも角が生えています。
カスクも後方にさらに伸びて防御力が上がっており、眼上のクレストは角の付け根にそのまま繋がるように並んでいるのが特徴です。
体高もあるため、その大きさがより協調されます。
体色は明るい黄緑〜深い緑色ですが、白や淡灰、淡褐色の帯のような模様が浮き上がり、立派な角は淡黄〜ベージュ色に染まります。
個体によっては角の先のギザギザ部分が赤く染まる事があり、歴戦の戦士のような覇気を纏っている感じすらあります。
そんな彼らはタンザニアの北東部に位置する「ウサンバラ山」に生息しており、その山の中でも標高1500m、東部の森林や茂みにしかいないそうです。
②ニシウサンバラフタヅノカメレオン
こちらは名前が示す通り、ウサンバラ山の西部の森林に生息している種類です。
「爬虫・両生類パーフェクトガイド カメレオン」によりますと標高約1200〜2500mの高地を主な生活の場所としていますが、行動範囲が広く生息数も多いようで、森林や茂みだけでなく高い木の上から民家の近くでも見られるそうです。
大きさは30〜40cmほどで、先ほどご紹介したオオフタヅノカメレオンに次ぐ大きさを誇ります。
「レインボーフィッシャーカメレオン」とも呼ばれており、最も美しいフィッシャーカメレオンとして流通した種類としても有名です。
実際に体色は非常に美しく、普段は明るい黄緑色をしていますが、体側にはピンクや黄色、オレンジ、中には紫色が広範囲に発色し、そこに美しさの重ねがけで細かな青いスポットが散りばめられるという芸術センスが爆発した体色をしていました。
さらに、全身鮮やかなオレンジ色を基調とし、グラデーションした帯模様が表れるトンデモない体色を持つ個体もいたのだから驚きです。もはや自然界でちゃんと忍べていたのか疑問に思うレベルの体色です。
角の長さは前者に劣りますが、より真っ直ぐに伸びています。
3,フィッシャーカメレオンが見られなくなった理由について
フィッシャーカメレオンやヒゲコノハカメレオン、アオマルメヤモリなどの魅力的な動物達が生息しているタンザニアですが、密猟や乱獲による被害から動物達を守るために野生動物の輸出を停めています。
実際に見つかってから密猟な乱獲が横行し、僅か数年でサイテスに記載された種類もいるので納得の対策と言えます。
タンザニアからの輸出がなくなってから、かつては美種としてもてはやされた彼らを実際に見る機会はほとんど無くなり、今では図鑑やHPの写真でしか彼らの姿を知る方法はありません。
4,今や幻のカメレオン!フィッシャーカメレオンの飼育方法について!
入荷が止まっている種類ではありますが、いつか奇跡の入荷が果たされるのではないかと僅かな希望を持っている筆者。
そんな奇跡に備え、フィッシャーカメレオンが気になった方のためにも彼らの飼育方法についてご紹介させていただきます。
①ケージについて
フィッシャーカメレオンは大型なだけでなく活発に動き回る種類なので、高さだけでなくケージの広さも考慮する必要があります。
参考資料では最低でも幅70〜80、奥行き45、高さ50cmのケージが飼育の条件となっています。
協調性はあるので小さい内は同じケージで多頭飼育もできますが、オス同士だったり小競り合いがある場合は分けて飼育する必要があるので、ケージをいくつか備えておいた方が無難です。
また、活発な所はベーメカメレオンにも通じるものがあり、運動量も同等かそれ以上なので、彼ら専用の広いケージを自作、またはオーダーメイドしたり、部屋んぽさせて運動できるようにしてあげるとストレスが少しは和らぐと思います。
⭐放し飼いの場合は汚れ対策とこまめな掃除を!
ケージよりずっと広い室内の放し飼いはカメレオンにとっても良い運動になりますし、好きな場所でのんびりくつろぐ事だってできます。
そのためには部屋の中にあるカメレオンの安全を脅かす物を取り除くだけでなく、登れる場所や給水場所なども設置する必要があります。
このようにカメレオンの部屋ができたら、後は湿度やフンなどによる汚れをこまめに掃除して清潔に保つようにしましょう。
②湿度について
日中は65%、日没後は80〜90%、スコール再現時は90%以上、夜間は70%を目安として保つ必要がありますが、これはお迎えして間もない体力が落ちた個体を飼育する時の方法だったりします。
また、湿度が籠って蒸れている環境という訳ではないので、サーキュレーターやファンである程度通気性を確保しなければなりません。
お迎えしたフィッシャーカメレオンが環境に慣れて、餌を食べたり水も飲んで体力が戻ってきたら、少しずつ湿度を下げて乾燥した環境に慣れさせる必要があります。
同属のベーメカメレオンも湿度高めが良いとされていますが、実際湿度が高すぎると食欲が落ちたりしたので、飼育している子の状態を見ながら少しずつ湿度を下げ、過ごしやすい湿度を探してあげるのも大切だと思います。
⭐むしろ湿度が上がらない!そんな時は降雨再現機器を使おう!
給水器や植木鉢、床材によっては湿度を保ちやすくなる物もあり、定期的にケージ内に霧吹きをする事で給水だけでなく湿度を上げる事ができます。
しかし、なかなか定期的に霧吹きができず湿度を保ちづらいという場合は降雨再現機器を使うのがオススメです。
商品名として「モンスーン」などがあります。
この機器があれば、雨が降る時間や降る長さも調節できるため定期的に湿度保持と給水補助ができるので湿度に悩む方の強い味方になります。
③温度勾配について
フィッシャーカメレオンの飼育ではホットスポット直下で約29℃、周辺で25℃、低温部で23℃、夜間は18〜20℃というデータがあります。
こちらも湿度と同じように、お迎えした子が飼育環境に慣れて元気いっぱいであれば少しずつ低温乾燥の環境に慣れさせます。
標高が高い場所に生息している種類は比較的低温に強く、むしろ高温は苦手だったりします。
⭐湿度や温度が分かるようにしよう!
湿度や温度は慣れると手の感覚で分かる方もいるそうですが、飼育環境がどうなっているか確実に把握したい方は「湿度計」や「温度計」を設置するのがオススメです。
温度に関しては「サーモガン」で測る事もできるので使いやすい方を選んでください。
④紫外線について
爬虫類飼育に欠かせないアイテムの1つです。ホットスポットや照明と兼用する場合もあります。
紫外線ライトはジャングルに生息するヒルヤモリなどに使うタイプでも良く、むしろ距離や角度に注意が必要です。
⭐シンプルに日光浴も効果的!
カメレオンが日光浴ができる環境があれば、紫外線ライトを頻繁に使わず保温球やホットスポットライトでケージを温め、紫外線は日向ぼっこで供給する事ができます。
その場合は窓を網戸にして日光が入るようにしたり、日光浴用のケージにカメレオンを移してから外に出したりします。
もちろん飼い主は目を離さないようにし、カメレオンの体色変化や周りを観察して危険が無いよう注意が必要です。
1〜2時間ほどが目安ですが、カメレオンが暑がっていた場合はすぐにケージに戻してあげましょう。
Q,紫外線ライトは同じランプをずっと使い続けて良いの?
A,ランプには使用期間があるので、交換目安を元に新しい物と交換するようにしましょう。
カメレオンなどの爬虫類に大切な紫外線ですが、一般的にライトで照射する事で供給しています。
そんなライトも使い続けていると紫外線量が徐々に減ってしまい、本来の効果が無くなってしまいます。
これを防ぐために、使っているライトの商品説明をよく読んで「交換の目安」を覚えておくようにしましょう。
Q,日光浴は窓ガラス越しではダメなの?
A,窓に使われているガラスが紫外線を防いでいるため窓越しはオススメできません。
時間と環境があればお手軽に紫外線を供給できる日光浴ですが、中には「窓越しに日光浴をさせても良いのでは?」と思う方もいます。
窓ガラスは「UVカット」の物があり、爬虫類達に必要な紫外線まで活発してしまうため、窓ガラス越しの日光浴は意味が無いものになってしまいます。
爬虫類に必要な紫外線は「UV-A」「UV-B」です。
「UV-A」は食欲増進や脱皮、繁殖に必要であり、「UV-B」は吸収する事で体内でビタミンDを作り出すのに必要です。
このビタミンDはカルシウムを吸収するのに必要な栄養素なので日光浴は「クル病」の予防にもなります。
⑤餌について
基本的には体の大きさに合わせながら、他のカメレオンと同じようにカルシウムパウダーなどのサプリメントをまぶした昆虫を与えます。
与える餌としてコオロギやレッドローチ、デュビアをあたえますが、たまにオヤツとしてミルワーム、ジャイアントミルワーム、ハニーワーム、シルクワームを与えて餌に変化をつけるようにしましょう。
冷凍飼料に慣れていればセミやバッタも良い餌になります。
フィッシャーカメレオンは活動的で行動範囲が広い分様々な獲物を口にしています。
そのためか、メニューに変化がないと飽きて食い付きが悪くなったり拒食状態になる事もあるため、時々活き餌として「ハウスゲッコー」や「ピンクマウス」などを与えて変化をつけると反応が良くなり食欲が戻ったというデータもあります。
⭐この特徴はペペ君にも…!
嫌いな人工飼料も克服したペペ君ですが、実はメニューに飽きてコオロギを拒否した事がありました。
横目でチラッと見てから食べるのかと思うと、そのままUターンしてコオロギに見向きもしません。
代わりにハニーワームやミルワームを与えると喜んで食べ、その後はコオロギを再び食べるようになって安心したのを覚えています。
冷静に考えれば、カメレオンは野生下ではもっとたくさんの種類の獲物を捕食していますし、私達人間もずっと同じ食べ物は飽きてしまいます。
⑥給水について
ドリップボトルや水容器+エアレーション、モンスーンの使用や水が流れるタイプの給水器を使う事で水を飲ませる事ができます。
カメレオンは水の動きやキラキラとした光の反射に反応して水を認識するため、水を垂らす、波立たせるなど「動きをつける」事はとても重要です。
最近ではカメレオンや樹上性爬虫類用のオシャレな給水器もあるので、飼育器具にこだわりがある方はそちらもオススメです。
また、給水器があってもちゃんと水を飲んでいない時があります。
これをチェックする時は目の周りがくぼんでいないかを見る他、カメレオンの口元や目の前でスポイトや給水ボトルから水を垂らすと飲もうとするので分かりやすいです。
⑦レイアウトについて
かなり活発に動き回るだけでなく手足も大きいので、ある程度太さのある枝や人工ツタ、止まり木などを使ってたくさん動き回れるようにする必要があります。
特に高さより広さが重視されているので、ケージの広さを最大限に活かせるように考えながら配置します。
⭐観葉植物と人工観葉植物のメリット、デメリットについて!
観葉植物も人工観葉植物もカメレオンのレイアウトによく使われています。
それぞれメリット、デメリットがあるのでそちらについて解説させていただきます。
まず、観葉植物のメリットですが、生きている植物なので「蒸散」という葉の裏から水蒸気を出す行動をします。このおかげでケージ内の湿度を保つ事ができます。
他にもドリップボトルから垂れる滴を受ける事で水を無駄にしなくて済んだり、柔らかいのでカメレオンを傷付けない事、エボシカメレオンなどの植物を食べる種類にも安心して使う事ができるというメリットがあります。
一方デメリットとして、生きている植物なので日々のお世話が必要になります。
水を与えたり枯れた葉や伸びすぎた部分をトリミングしなければ枯れてしまい、カビなどの原因になってしまうのです。
また、人工観葉植物より値段が高い場合があります。
次に人工観葉植物のメリットですが、100円ショップやホームセンターなどで安価で簡単に手に入る事や、作り物なのでお世話をする必要がないというのが大きいです。
他にも本物の観葉植物だと配置や環境作りの段階で時間がかかりやすいですが、人工観葉植物だとそのまま設置するだけで自然の雰囲気作りや隠れ家として機能するのもメリットの1つとなります。
しかし、デメリットとして植物質を食べるエボシカメレオンなどのレイアウトには誤食防止の観点から不向きな事や、水分を保てない事、商品によって飛び出しているプラステックの部分が怪我の原因になってしまう可能性がある事などが挙げられます。
5,フィッシャーカメレオンの繁殖について
輸入が止まり、今では生きた姿を見る事すら難しいフィッシャーカメレオン達。
彼らは国内繁殖が軌道に乗る前に入荷がなくなってしまったので、繁殖データはごく僅かしかありません。
①雌雄判別について
角があるカメレオンの仲間は雌雄判別が特に簡単で、フィッシャーカメレオンも見分け方は難しくありません。
まずは鼻先から伸びる角ですが、フィッシャーカメレオンの場合はオスの特徴となり、メスは生えてきません。
オオフタヅノカメレオンとニシウサンバラフタヅノカメレオンの場合は個体差はありますがメスにも角が生えます。
しかし、オスの角よりずっと小さいので簡単に見分ける事ができます。
次に頭部のカスクです。オスのカスクは後方にいくにつれて高くなりますが、メスのカスクはオスほど高くならず若干丸みがあります。
さらに、尻尾にも違いがあります。
オスの尻尾は付け根から太く、厚みがある尻尾をしています。
しかし、メスの尻尾は付け根から細く、オスのような厚みがありません。
このように身体的に違うというのもありますが、性格も少し違います。
基本的にフィッシャーカメレオン達は協調性が悪くありません。
中でもメスは同性・異性関係無く仲良く過ごす事ができ、相当個体間の中で仲が悪くなければケンカに発展する事は珍しいです。
一方でオスはメスに対しては優しいものの、オス同士を対面させてしまうと角をぶつけ合って激しく争ってしまいます。
②繁殖形態について
フィッシャーカメレオン達は高地に生息していますが、卵生のカメレオンです。
産卵が近付くと地上に降りて、体がスッポリ入るくらいの深さの穴を掘り産卵します。
③産卵数について
大きな体をしていますが産卵個数は意外と少なく、同サイズであればパンサーカメレオンやジャクソンカメレオンの方が産卵数や出産数が多いです。
④ペアリングについて
異性同士でもケンカをするカメレオンもいますが、フィッシャーカメレオンはメスがオスを拒絶していない限りケンカになる事は少ないため、ペアリングは比較的簡単だったと言われています。
オスとメスを一緒のケージにしていると、オスは「ボビング」という頭をカクッカクッと左右に振る行動を取ります。
これはカメレオンの求愛行動で、メスに自分の気持ちをアピールしているのです。
⑤妊娠色とお世話について
妊娠したメスは体色を暗い緑色に変えるとされています。
卵を作るために食欲も旺盛になり、水もよく飲むようになります。この特徴はペペ君の奥さんだったベーゼちゃんもほぼ変わりません。
フィッシャーカメレオンはベーメカメレオンに飼育・繁殖条件が近いとされているので、餌はメニューに飽きがこないようにしつつ、消化吸収しやすいようにサイズダウンしたり脱皮直後の体が柔らかい昆虫を与えても良いアクセントになると思います。
⑥産卵床について
産卵が近付いてきたメスのお腹にはポッコリと卵の形が分かるようになり、食欲が落ちて水をよく飲むようになります。
また、ケージの下部分に降りてきてウロウロしたり、床材や植木鉢の中を掘り返すような行動を取り始めます。
このような行動が見られたら、産卵のために黒土や赤土、水コケを混ぜて「産卵床」を作ります。
我が家では湿潤系床材とバークチップを混ぜた物を産卵床に使いましたが、ちゃんと掘って産卵してくれました。
⑦産卵が終わったら
産卵が終わったら、産卵床を一度取り出してメスの回復に専念します。
栄養価の高いハニーワームや、柔らかく食べやすい脱皮直後のコオロギやミルワームを与えてゆっくり休ませてあげましょう。
また、産卵が終わってもお腹がポコッとしている場合は優しくお腹を触って卵が残っていないか確かめます。
フンと違って体内の卵はやや細長い楕円形をしているので分かりやすいです。
卵が残っていそうな場合は再び産卵床をケージに設置してしばらく様子を観察しましょう。
産卵床から卵を取り出す前に、まずは孵卵用のケースを用意します。
孵卵用ケースには「バーミキュライト」や「ハッチライト」を敷いておきます。
孵卵用ケースが準備できたら産卵床から卵を取り出します。この時掘り出した卵をひっくり返さないように注意が必要です。
取り出した卵は万が一ひっくり返しても、すぐ元の向きが分かるようにペンで印を付けておくと安心です。
⑧卵のお世話と孵卵期間について
フィッシャーカメレオンの国内繁殖データは少ないですが、16〜25℃の範囲で温めて1年以上かけて孵化したというデータがあります。
この孵化までの期間の長さや温度がネックとなり、繁殖データが少なくなってしまった可能性は少なくないと筆者は考えています。
温度管理や温めるタイミングによっては孵卵期間を数ヵ月短縮できるそうです。
これはベーメカメレオンも同じなので、改善や対策のしようが大いにありそうです。
⑨孵化したら
カメレオンに限らず卵生爬虫類のあるあるですが、有精卵は床材の水分を吸って少し大きくなります。そして孵化が近付くと、卵の表面にから水分が沁み出してきます。
水分が沁み出してからしばらくすると、卵が少しずつ裂けていき、赤ちゃんが顔を見せます。
ヤモリの仲間だったりすると、そのままツルンと出てくる事がありますが、カメレオンやモニターなどは卵の中で時々休みながら少しずつ卵から這い出してきます。
⑩赤ちゃんのお世話について
ほぼベーメカメレオンの育て方と変わりませんが、コオロギのピンヘッド(生まれたてのコオロギ)やウイングレスのショウジョウバエにうっすらとカルシウムパウダーをふりかけてから与えます。
給水は霧吹きで行い湿度も保つようにしましょう。
水に気が付くと流木や観葉植物などに付いた水滴を小さな口を開けてペロペロと舐め取ってくれます。
⭐赤ちゃんカメレオンの餌の違いとは?
赤ちゃんカメレオンや赤ちゃんヤモリの餌として使われる頻度が高いのが「コオロギのピンヘッド」と「ウイングレスのショウジョウバエ」です。
違いとしては、ショウジョウバエの方が反応はしやすいものの、栄養価はコオロギの方が高いとされています。
また、コオロギは栄養価は高いものの、生き残って大きくなった個体が赤ちゃんカメレオンを攻撃する可能性もあるため、こちらも一長一短があります。
どちらを使うかは飼い主次第ですが、それぞれの特徴を理解しながら赤ちゃんに美味しいご飯を食べさせてあげましょう。
⭐ワクワクドキドキ!?「ファーストシェッド」!
孵化してから大切にお世話を続けていると、赤ちゃんカメレオンが脱皮の時を迎えます。
このファーストシェッドは「最初の脱皮」を意味しており、赤ちゃんカメレオン達は初めての脱皮に苦戦しながら一生懸命脱いでいきます。
脱皮が近付くと体全体が白っぽくなり、そこから少しずつ古い皮が破れ、剥がれていきます。
まとめ
今回は幻の2本角・フィッシャーカメレオンについて皆様にご紹介させていただきました。
飼育方法は基本的にペペ君でお馴染みのベーメカメレオンに準ずるため、通気性や連続の高温に注意しながら部屋んぽなどでたくさん運動させてあげられればそこまで難しい種類ではないと思います。
今は入荷がないので何とも言えませんが、タンザニアからの輸出が再開される事があれば、筆者はフィッシャーカメレオンもお迎えしたいと考えております。