ナマクアカメレオンについて
画像引用元:CANDLE 様
「カメレオン」といえば、頭部に角を生やしていたり長く伸びる舌を持っていたりと不思議な見た目、生態をしている他にも森林や植物が生い茂るジャングルに生息しているイメージが強いかと思います。
しかし、今回ご紹介させていただく「ナマクアカメレオン」はそんなイメージを破壊する「型破り系カメレオン」となっています。
1,ナマクアカメレオンの特徴は?
ナマクアカメレオンはカメレオンの仲間の中でも「エボシカメレオン」や「グラキリスカメレオン」等が含まれる「ナミカメレオン」のグループに分類されています。
ナマクアカメレオンの大きさは約30cmです。
ある場所に生息している事から「世界で最も過酷な環境を生き抜いているカメレオン」とも言える種類で、その珍しさから未だに謎多きカメレオンでもあります。
①ずんぐりボディー!
ナマクアカメレオンが分類されている「ナミカメレオンの仲間」はエボシカメレオンやグラキリスカメレオン、セネガルカメレオン等がいますが、どの種類も長い尻尾にスレンダーボディーをしています。
しかし、ナマクアカメレオンは彼らと比較すると太くてがっしりかつ少し短めの体型をしています。
また、尻尾もくるりと巻く事はできますが、ナミカメレオンの中ではかなり短めです。
②背中のクレストは「花のつぼみ」みたい
ナマクアカメレオンのカスクや背中のクレストの一部は深紅に染まって美しく、特にクレストは特徴的な形状をしていて筆者にはバラ等の植物のつぼみに見えます。
③めちゃくちゃ生き抜くのに特化した体!
「世界一過酷な環境に生きるカメレオン」と言っても過言ではないナマクアカメレオンの体には体色変化や伸びる舌以外にも生き抜くための術が詰まっています。
まず鼻には特別な腺があり、体内に溜まった余分な塩分を排出する事ができます。
次に膀胱からは、排出した便からまだ利用できる水分を吸収する機能もあります。
さらに、細かいウロコが覆う皮膚には「空気を保つ」という特殊な機能があるため、体温を15〜40℃近くまで幅広く保つ事ができるとされています。
④まぶたが長い
と言われそうですが、敢えて皆様に伝えたい!ナマクアカメレオンは「まぶたが長い」と!
ペペ君はパッチリとした丸い目をしているのですが、ナマクアカメレオンはまぶたが長いので目が真ん丸というよりはレモン型、あるいは土星のシルエットみたいに見えるのです。
⑤足が速い
ゆっくりのんびり移動するカメレオン達。相当な理由がない限りは急に走り出したりする事はほとんどありません。
しかし、ナマクアカメレオンは違います。スタスタと走って移動するのです。
時速約5㎞と言われるとそんなに速くなさそうですが、カメレオンの中ではかなり素早く、いくら活発と言われるベーメカメレオンでも競争したらかなり厳しいかも知れません。
2,ナマクアカメレオンの生息とは?
「世界一過酷」この言葉は伊達ではなく、彼らが生息しているのはアフリカ大陸のナミビアやアンゴラ。
その中でも「ナミブ砂漠」に生息しているのです。
ナミブ砂漠は昼間は50℃にも昇る灼熱、夜間は10℃近くまで冷えると言われる寒暖差が激しい大地です。
また、植物も少なく餌も水分も少ない過酷な環境なので、生息している生物も特殊な生態を持っている他、獲物になかなかありつけない環境から一撃で仕留めるために猛毒を持つ種類が多いという環境でもあります。
そんな環境の中を生き延びるナマクアカメレオンは、「動物界のアサシン、ゲリラ兵、忍者」とも呼ばれるカメレオンの中でも最強クラスのガッツや生存力を備えているのです。
3,ナマクアカメレオンが食べている物は?
砂漠に生きる彼らは基本的には餌を選びません。動く物、水分がある物は何でも捕食します。
砂に隠れている甲虫のような硬い外殻を持つ虫や小さなトカゲ、ヤモリ、サソリ等も捕食し、さらには自分と同種の幼体や、ほとんどの場合カメレオンの天敵となる毒蛇すら捕食します。
☆一撃必殺!反撃は絶対に許さない!
餌も水も無い世界で生きるナマクアカメレオン。餌となる生物を確認するとすぐに狩りを始めます。
狩りの仕方自体は他のカメレオン達と同じように長い舌を使ったアウトレンジ戦法ですが、先程も少し触れたように、彼らは猛毒を持つ「サソリ」や「ヘビ」すら捕食します。
その方法は必ず相手の「武器」に標準を合わせ、襲いかかります。
サソリなら「尻尾」、ヘビなら「頭」といった部位を舌で捕らえ、一気に口に引き寄せて大きく丈夫な顎と鋭い牙で武器を無力化すると共に獲物の命も絶つのです。
☆ナマクア君「好き嫌いはダメだぞ!」
「砂漠の特殊戦闘員」とも呼べそうなナマクアカメレオン。過酷なナミブ砂漠を生き抜くために植物を積極的に摂取する事でも知られています。
植物を摂取する事自体はエボシカメレオンや稀にパンサーカメレオンで知られていますが、少しでも栄養や水分を獲るためにナマクアカメレオンは植物を摂取しているのです。
ある研究者によると、ナマクアカメレオンの胃の内容物の3割が植物であったという報告もあるそうです。
4,ナマクアカメレオンの繁殖形態は?
ナマクアカメレオンは卵生のカメレオンで、砂漠に穴を掘って産卵する事が知られています。
年に2〜3回繁殖すると考えられていて、産卵数にバラつきがあり、数個〜20個前後産卵するようです。
砂の中はある程度の深さだと昼間の強い日差しや高い気温、夜間の凍える寒さから卵を守ってくれます。
5,名前の由来は?
ナマクアカメレオンの学名は「Chamaeleo namaquensis」です。
6,別種だけどちょっとご紹介
(なんと”ゲーム「メタルギアソリッドⅤ」にもナマクアカメレオンが登場”しています。)
ナマクアカメレオンはナミカメレオンの仲間ですが、カメレオンの仲間の中には「ナマクアドワーフカメレオン」という種類もいます。
こちらは「ナマクア」と付いていますが、ナマクアカメレオンのように砂漠に生息しておらず、南アフリカの西部海岸線に広がる森林や民家の近くの林や低木等に生息しています。
その場所はオーシャンビューで、餌や水にも困らない、ちょっとセレブな環境です。
学名も「Bradypodion occidentale」であり、「ハチノスカメレオン」に分類され、「occidentale」は「西方」を意味しています。
ナマクアドワーフカメレオンの見た目は尻尾がやや短めの樹上性カメレオンで、体色もナマクアカメレオンとは大きく違います。
背中のクレストは小さな円錐形のトゲといった形で、体の側面には滑らかな体表にいくつかの大きめな飾りウロコがあります。
また、体色も灰〜黒褐色に白いラインが入り、喉のクレストは口先に近い程大きく平たい形をしていて一部重なるように生えています。
7,日本との関わりは?
数ある爬虫類の中でも個性的なグループであるカメレオン。その中でも生態から生息地まで抜群な個性を持つナマクアカメレオンは数年前、ペットとして日本に輸入された事があります。
もちろん数も少なく、値段も非常に高価だったようです。
ナマクアカメレオンの飼育は難しく、砂漠の寒暖差の再現や紫外線、さらには通気性と砂の質にもこだわる必要があります。
また、「爬虫・両生類パーフェクトガイド カメレオン」によると、カメレオンの飼育には気を遣わなければならない給水の方法もドリッパーや霧吹きではなく野菜等の植物を与えたり与える餌用のコオロギ等の昆虫にたっぷり水を飲ませてから与えるといった形で給水する必要があるようです。
まとめ
今回は砂漠に暮らす珍しいカメレオン・ナマクアカメレオンについて皆様にご紹介させていただきました。
ジャングルどころか砂漠という人間でも厳しすぎる環境に適応し生活しているナマクアカメレオンは、その生き抜く術や生態、見た目から個性が抜群であり、多くの研究者や爬虫類愛好家の興味を惹き付けて止まない「幻のカメレオン」でもあります。
未だに謎多きカメレオンではありますが、岩の上で佇む姿が写真におさめられていたり、暑い時は白く、寒い時は黒い体色に変化させて上手く体温を調整したりしているようです。
そして、砂上にはカメレオン特有の足跡を残しながら砂漠を悠然と進むのです。
飼育下での繁殖例はありませんが「交尾が確認された」という記録があるため、かなり大変だとは思いますが飼育設備や環境にこだわり抜いてナマクアカメレオン最優先の飼育ができればもしかしたら奇跡が起きるかも知れません。
ナマクアカメレオンは動物園でもなかなかお目にかかれない砂漠という自然が生んだ幻の生き物です。
ナマクアカメレオンの砂漠の様子を「BBC」で見る事ができますので、気になった方は是非見てみてください。